幻石〜5つの石を探す旅〜

素人の一次創作サイトです。

幻石〜5つの石を探す旅〜 第13話

昼過ぎ、約束の時間。

ベネジクト、白姫、そしてレストの順に、待ち合わせの場所に指定された大きな木の下に集まっていた。

残るは真騎なのだが……。

「昼過ぎってだいぶ大雑把よねー……真騎、何かあったのかな?」

「彼奴にしてはちと遅いのう。我ですら来ておると言うのに」

という話しをしていると、遠くから黄色い人影が見えた。

真っ黄色な人物などそうそういないだろう。

「私が最後ですか。すみません……少し長引いてしまいまして」

 「いいよ、そんなに待ってないし。で、うちらなんにも見つけらんなかったんだけど、真騎はなんかあった?」

「申し訳ありません。成果無しです……」

しゅんとする真騎。

あの後掃除をしながら本を見ていたが、それらしい書物は見つからなかったようだ。

「普通に見つかる方がおかしかろう。また別の方法で探せばよい」

 「そうですね。ここには無いということで、2の島田舎《ツールーラル》に進みましょうか」

 

 

第13話「電波が届きません」

 

 

1の島の時よりも道は短いのだが、ここでまたハプニング。

「ねえちょっと」

「どういうことだこれは」

「たくさんいますね……」

今回は目の前ではなく背後。

殺気や敵対心こそ無いものの、数十匹の魔物がぞろぞろと付いてきているのだ。

これらはみんなレストの召喚獣

「かわいいのもいるけどさ、あんのごっついのはどうにかならないわけ?怖いんだけど……」

 「みんないい子だから……大丈夫」

今現在レストは、付いてきている魔物のうちの1匹に座っている。

鳥のようだが、背中は平で、翼は縦に長い。

まるでベッドのような魔物である。

種族名はベッドードーだ。

そしてこの魔物はなんと……

「ワタシタチ魔物ハ、ムヤミニ攻撃スル事ハアリマセンデスヨ。警戒心ノ強イ奴ヤ、暴走シテイル奴ハ別デスガ」

話すことが出来るのだ。

「あんたもよ!なんで喋るわけ!?意味わっかんないでしょ!?」

「努力シマシタ!」

「努力でどうにかなるものなのか?ちと不気味だのう」

「……ドドは頭が良いだけ」

「城のみんなにも見せてあげたいです」

 いくら魔物とは言え、人の言葉を話せるのは珍しい。

珍しいというのも、他に何件かそういう例が上がってきているからだ。

魔法が使える分普通の動物より知能が発達しているのだと、最近発表された。

「他の魔物は話せないの?」

「ハイ。レストヲ通ジテ話セマスカラ、困ル事ハアリマセンデス」

 「魔物の言葉がわかるってのも大変なのね」

 

 

 

案内されながらしばらく歩くと、1の島田舎《ワンルーラル》よりも少し賑やかな、2の島田舎《ツールーラル》が見えてきた。

人々は、魔物を大勢連れていても驚く事は無かった。

その中から1人、小柄な男性がこちらに駆け寄って来る。

「帰ってきたかレスト!全くお前は、城に行った後連絡も寄越さんで何をしておったんだ……それで、そちらの方々は?」

「一緒に旅する人達……」

「んん?旅?最初っから説明してくれんか」

「あ、あの……良ければ私から説明致しましょうか?」

「そうしてくれると助かる。なんせこいつぁ言葉が少ないからな。おっと、申し遅れた。俺はこいつ、レストの父親。ルボワってんだ」

「私は光闇 真騎と申します」

 「うちはベネジクト」

「羽前 白姫だ」

自己紹介をし終えると、立ち話はなんだからと、家に案内された。

 

 

「王女様直々に〜!?たまげたなー!レストにそんな大事な役目が回ってくるなんてなあ」

かなり驚いたようで、机に身を乗り出していた。

元々リアクションが大きいのも相まって、とても大袈裟にも見える。

「きっと彼にしかない特別な力があったからではないですか?あれは素晴らしい能力ですよ」

「ははっ!そうだろう?自慢の息子さ!あいつにはいつか世界中を見せてやりたかったからな。いい機会だ」

「安全面は私にお任せください。必ず無事にお帰し致します」

言葉と共に、座ったまま一礼。

「頼もしいね〜!頼んだよ、他の2人もな」

「頼まれるのは良いんだけどさ、うちらは警戒されててろくに話せもしないんだよね。どうすれば話せる?」

女子のベネジクトと、性別は無いが女性に見える白姫。

返事や必要な事は話すが、自分から近寄ってきたことは未だに無い。

それどころか完全に避けられている。

 「すまんなあ。半年前くらいに、女房が仕事とだけ告げて家を開けておってな。それ以来女は年齢問わず皆信用出来なくなっとるんだ」

たまに話していた近所の女の子、かわいがってくれていた近所のお婆ちゃんなどなど。

よくすれ違うのにすっかり疎遠になっていた。

 話すのは魔物とばかり。

「愛想をつかされたのではないか?」

「かもしれんなあ。否定はしきれん」

苦笑い。

そうするしか、今のルボワには逃げ道が無かった。

 「元々そんなに話す奴じゃ無かったんでなあ。きっと時間が解決してくれるさ」

「そんなむちゃくちゃな」

「丸投げしおったな……」

無理やり逃げ道を確保するルボワ。

苦笑いが大笑いに変わっている。

「話しは変わるのですが、ルボワさんは幻石の守り人というのはご存知でしょうか?」

「幻石の守り人?知らんなあ。第一幻石なんて存在するのかもわからんのに」

「そうですか……」と、今度は真騎が苦笑い。

対するルボワは、何かを思い出したように口を動かした。

「だが、昔っから幻石の仕業なんじゃねえかって話しがあんのよお。ここぁ空間を司る幻石があるって言い伝えだろ?」

 2の島は空間の幻石があると伝わっている場所。

地球と繋がっていた不安定な空間を守るためではないかと考察されている。

そしてその影響なのか、2の島出身の者は空間能力に長けている事が多い。

「ここよりも奥、森林を越えた2の島先端《ツーポイント》にはたどり着けねえんだ」

「行けないって事ですか?」

「おうよ。俺もダチと行ったことがあるんだが、進んでも進んでも同じ道。まるで入ってくんなって言われてるみてえでよぉ。帰りはそんなこと無かったけどな」

 ただでさえ他の島よりも空間が不安定な場所だ。

制御できていなくても不思議ではない。

しかしもし幻石の仕業なら……?

「それと……」

「まだ何かあるのか?よく知っておるのう」

 「はははっ!今言おうとしたやつの方が、いろいろ知ってるぞ。素性はわからんが、ここいらでヒーローというのをやっておる。いわゆる雑用係だな。名前は乙人(おつと)。見たらすぐわかるさ。うるさい奴だからな」

「その方に聞いたら何かわかるかもしれませんね……ありがとうございます、ルボワさん」

「お安い御用だ!息子も世話になってるしな」

その世話になっている息子、レストは今ぐっすり寝ている。

数日ぶりの実家だからなのか、いつもより深い眠りについていた。

隣には常に小さい魔物が沢山。

「今日はもう遅いから、止まっていくといい。レストもすっかり眠っちまってるしな」

「いいの!?やったー!野宿回避ー!ありがとうおじさん!」

「毎度毎度運が良いのう」

「すみません、お世話になります」

「その代わり、付き合ってくれよ?」

その日の夜、深夜まで晩酌を続けた為に、城との通信ができなかったとかなんとか……。

 

 

「真騎ー大丈夫ー?」

「大丈夫じゃないです……」

「2人して飲み過ぎなのだ。加減を考えんか」

「返す言葉もねえや」

翌朝。

椅子に座ったまま寝ていた真騎とルボワの元に、白姫とベネジクトがやって来ていた。

いつもは起こされる側のベネジクトが、今日は逆の立場である。

「真騎ってお酒飲めるのね。なんか意外かも」

「ふふっ、よく言われます」

「記憶が曖昧だが、兄ちゃんあんまり酔ってなかったな」

「そんなこと無いですよ。夜の記憶全くありませんからね」

「全くないの!?」

全く無いらしい。

本当に綺麗さっぱり忘れているようで、飲む前に退出した白姫とベネジクトの記憶さえ無かった。

「さて。だいぶ楽になりましたし、ルボワさんを1人にするのは心配ですがそろそろ出ましょうか」

「えっ休まなくていいの!?」

「はい。自分の身体なら光魔法で治せるんです。医者ではないので他人は治せませんが」

さすが隊長……と言ったところか。

しかし普通ならば、こう言った病などは自分の魔法で治すことはできない。

医者に魔法をかけてもらうか、時間が解決するまで待つしかないのだ。

「不思議な奴だのう。貴様本当に人間か?」

「ふふっもちろん人間ですよ」

「魔法は解明されてない部分も多いし、ありえない話しじゃ無いでしょ」

「そういう事です。ではルボワさん、昨晩はありがとうございました。お水と食べ物を置いておきましたので、召し上がってください。失礼致します」

「……バイバイ」

「こっちこそありがとうな。レストをよろしくたのむぁ!レストも迷惑かけんなよー!」

深々と礼をして、4人はその場を去った。

 

 

次の目的は、いろいろ知っているという乙人に会うこと。

特定の場所に現れる訳では無いため、これまた探さねばならない。

ただし今回は有名人なので、探すのは簡単であった。

バラけることなく4人で聞き込みをしていると、「その子ならさっき向こうで子供達と遊んでいた」という嬉しい答えが返ってきた。

指差した方へ向かうと、聞いた通り子供が集まっていた。

そしてこのベネジクトの一言。

「なにあの仮面……ダッサ」

 金髪の髪を右耳辺りで1つにまとめ、左に垂らした前髪は長く、亜麻色のワンピースに黒のズボン。

 おまけに青い飾りの着いたネックレスに、顔面にはパーティでよく見るあの仮面。

ヒーローとは程遠い容姿だが、子供に好かれている為悪い人では無さそうだ。

「あの、乙人さん……ですか?」

「はっ!何奴!?さては悪の組織の者か!?」

「えっ」

「んなわけないでしょ」

「うるさい奴というのは真だったな」

華麗に茶番を止められ、頬を膨らました。

「ちょっとくらいノってくれたっていいだろー!?そうだ、俺様が乙人!悪い奴らは俺に任せな!」

 

 

幻石〜その他の愉快な仲間たち〜 第2話

さっき真騎と通信した時、俺の……俺らの家族が2の島に住んでいるのだと報告された。
会いたくない訳じゃない。
が、今更会ったところで何が起こるわけでもない。
もう顔も名前も思い出せないのだから。



第2話「囚人の人生」



「おいレイバー!!シャン様から聞いたぞ。あれは本当か!?」
「あぁ。昨日俺も真騎から聞いた。あいつが嘘つくわけない」
このちっこいのは俺の4つ上の姉貴、オルコ。
そこらのガキと混じってても違和感がない程小さな身体からは想像もつかないくらい、大人で、強くて、俺と違って頭の回転も早くて、誇れる姉貴だ。
ただとても厳しい性格で、俺は嬉しいが他人には恐れられている。
あの罵声たまんねえんだよなあ!
攻撃部隊隊長の俺と違って、姉貴は攻撃部隊育成長をしている。
いわゆる俺の部下を育てる役職だ。
姉貴のおかげで強い奴らがたくさんいるけど、平和ボケしたこの世界に攻撃部隊なんてあまり意味がない。
「お前は行きたいか?」
「行きたくないと言えば嘘になる。けど、何も覚えてないしな……」
「大丈夫じゃないか?親父たちの方は覚えてるさ」



俺らは子供だけを狙った人さらいにあった。
拐われたのは俺が6歳、姉貴が10歳の時。
妹がさらわれなかったのは、産まれたばかりだったからだろう。
その後の生活はとてつもなく酷かった。
そこはこれから住む場所と思えないくらいボロくて、そいつは俺らにいつもきつく当たった。
毎日働かされ、食事は1日1回の小さなパンのみ。
教育もろくに受けていなかった俺らに、当然実家を調べる術なんてなかった。
今思えば、嫌がってないでちゃんと勉強しときゃよかったな。


それから数年が経ち、さらわれたみんなで脱走計画を立て、無事に成功させた。
リーダーは姉貴だった。
しかし脱走したところで行く宛もなく、まだ子供だった俺らは働けず、盗みを犯して生きていた。
大人になってももちろん誰にも雇ってもらえなくて、この盗賊生活は続いた。
いつの間にかそこそこ名の知れた盗賊団になっていて、俺らを見るだけで人々は食料を差し出した。
その頃の俺らには罪悪感よりも優越感が勝っていて、平気で罪を犯した。


確か俺が20ちょっとくらいの時だ。
今から約10年前だな。
恐れていた地下牢行きが実現してしまったのは。
当然の報いだと、俺と姉貴、他数名は大人しく連行された。
何人かは逃げてたらしいけど。
薄暗くてジメジメした地下牢。
それに反して、そこは本当に罪を犯して捕まった者達なのか疑うほどいい奴らばかりだった。
でも話を聞いていると俺らより罪が重くて、刑期なんて比べ物にならない奴もいた。
連続殺人、城への無断侵入、あとは……忘れちまったけど。
なんでいい奴らばかりなのか不思議に思っていたが、そんな悩みはすぐに解決した。


ある日、飛んできた刃物が俺の鼻の頭をかすった。
もちろん牢屋に入っている時だ。
その後カツっと音を立てて、刃物が壁に突き刺さっていたのと、ゾクッとしたのをよく覚えている。
そしてこの言葉も。
「こんなものもよけられないのに、よく名が知れわたっていたものですね。なんと言うか、残念です。期待はずれでした」
「ガキがこんなところに何の用だよ」
「口の聞き方がなっていないようですね。躾が必要ですか?」
障害物を避けながら次々と飛んでくる刃物。
「私はシャン。この城の王女であり、6の島の長です。今日は見回りにきているのですよ」
そう、これは当時10歳くらいだったシャン様の言葉だ。
今のシャン様をそのまま小さくした感じだった。
容姿から性格から全て。
違うところと言えば威厳くらいだろうか。
俺にはこの時の方があったように思える。
記憶に修整がかかっているだけかもしれないが。
「なんだ、王女様かよ。安心しろ、逃げやしねえよ。ってか逃げらんねえし」
「あなたは脳筋ですか?私ならこんな牢屋、すぐに出ますけどね」
ませたガキだなと思った。
でもその姿は怯えているようにも見えた。
強がっていたから、キツい言葉をかけたのかもしれない。
「けど脱獄すれば刑期が伸びんだろ?そんな馬鹿な真似はしねえよ」
「利口な犬ですこと。ねえお兄さん、出所したら帰るところありますか?」
「あぁ!?んなこと聞いてどうすんだよ、どっか行けぇめんどくせえ」
今思うと、いくら子供とはいえ王女であるシャン様にとても失礼だったと思う。
もっとも、シャン様はそんなこと気にするような人じゃねえけど。
「宜しければ、城で働きませんか?攻撃部隊なんてとてもお似合いだと思うのですが」
「喧嘩売ってんのか?」
「いいえ。本気です」
城で働けるなんてほんのひと握りの奴らだけだ。
願ってもないチャンス。
手に職つけれるんだからな。
だが他の仲間は?俺だけ抜け駆けすんのか?
姉貴は……?
「……先ほどオルコさんにお会いしました」
「!?」
「優しいお姉様ですね。羨ましい限りです。あの方が私になんと仰ったと思いますか?」
検討はつく。
普段は鬼のようだが、根はとても優しい人だ。
きっと……。
「『私は構わないから、他の奴を雇ってやってくれ。だいたい、あいつらをこんなんにしちまったのも私のせいだからな』と。それであなたに伺いに来たのです」
「こんな戦うことしか能のねぇ俺よりも、頭のキレがいい姉貴の方が何倍も役に立つ!俺はいいから……」
「押し付け合いですか?あなた何か勘違いしていません?」
シャン様は後ろに手を回し、首を傾ける。
勘違い?どういう事だ?
「部隊ですよ。それも大勢の。戦力が増えるんですから、1人しか採用しないなんてもったいないことしません。人は選びますけどね」
ニコッと女神のような笑みを浮かべながら言い放った。
ああそうか。盲点だった。
でもそれなら、何故姉貴は断った?
「オルコさんには、攻撃部隊の隊長に誘ったんです。今の隊長、少し気に入らないもので……それにあなた達の方が経験は豊富そうですし」
最初の方でも言ったが、この世界にはこんな部隊なんて居なくても平和に過ごすことができる。
つまり実践経験のある奴は少ないのだ。
しかし俺達は盗賊、当然他の盗賊とやり合うこともあった。
「……何故俺を選んだ?他にもたくさんいるだろ」
「何故でしょうね。私はあなた達のこと微塵も知りませんが、悪い人には見えないのです。あなたとオルコさんは特に」
俺はこの時悟った。
この人についていけば、俺は変われるんじゃないか?
正当な人間になれるんじゃないか?
周りの悪人がいい奴に見えるのも、きっとこの人のおかげ。
具体的にどうだからとか、俺は馬鹿だからわからないけど、そう確信していた。
「わかった……いや、わかりました、シャン様。ここから出られた時、俺はあなたに一生命を尽くしましょう」
「ふふっ。その言葉、しっかりと心に刻んでおいてくださいね」
そう言うと、檻の隙間から細い手を伸ばし、俺の顔に魔法をかけた。
青色、水魔法だ。
「もうこんなヘマしないでくださいね」
回復はされたものの、魔法は苦手だったのか今も痣が残っている。
その後無事出所した俺は、攻撃部隊に入隊し、今に至る。
姉貴も言い負かされたようで、最初は部隊長に任命されていた。
その後は俺の出世とともにその座を降り、育成長をしている。


「サージャはん、お客様が来てはります。レイバーはんに用があるようですわ〜。どないします?」
「あなたが通達とは珍しいですね、浅葱さん」
「丁度通りかかったんですわ。えらいあたふたしてたんで助け舟出したっただけです」
「もしかして光闇さんが仰っていた方ですか?」
「お察しの通りですよ。証拠に黄色い印押された手紙持ってはりましたし」
「それならば私が"彼ら"に伝えておきましょう。あなたは客間に案内なさい」
「御意。ほな行きましょか、お嬢さん」


何故か俺と姉貴に客が来てるとの知らせを聞き、客間に向かっている。
誰だぁー!?俺らに知り合いなんて!
「百面相してるぞレイバー。そう気を張るな」
「んなこといったってよぉ!初めてだぜ!?」
いつもと変わらない姉貴。
すげえなあ、なんで冷静で居られるんだー!?
思考を巡らせていると、あっという間に客間の扉の前に着いた。
来てしまった……中に居るのは……?
コンコンっとノックし、返事を乞う。
『レイバーはんですかー?入っていいですよー』
何故か浅葱の声がして、それに答えるように俺らは中に入った。
中にいたのは、金髪と紫色の目を持った女性。
「この2人が、探しとった人物でっせ。オラシオンはん」
浅葱がその名を呼んだ時、ある人物が脳裏をよぎった。
今までずっと忘れていたひとりの人物。
俺の、俺達の、世界でひとりの……。
オラシオンって……お前まさか」
「覚えててくれたんですね……良かった……本当に……」
彼女はその場で泣き崩れてしまった。
「わざわざ会いに来てくれたのか……?」
「はい……光闇さんと別れた後、すぐに出発の準備を始めました。早く会いたかったから」
「言ったろレイバー、気を張るなと。オラシオンも、ありがとな。親父達は元気か?」
「はい。とっても元気ですよ!」
知らせを聞いてからわずか一日。
こんなに早く会えるなんて思わなかった。
世界でひとりの俺達の妹、オラシオン
微かに残る記憶には、泣きわめいていた小さな体しか無いけれど、今まで一緒に居たような感触がある。
「ずいぶん大きくなってんな!姉貴とは大違痛い!!」
「黙れクズ。それは記憶補正のせいだ」
「大丈夫ですか!?!?」
「こんなくらい何ともねえよ。寧ろ嬉しい」
「それ実の妹に引かれるんとちゃいます?」
「それはそれで良い!!」
「良いのか……」
ふふっとオラシオンが笑った。
本当にずっと想ってくれてたんだな。
俺は忘れていたのに、なんだか申し訳ねえや。
「兄さんと姉さんの安否が確認できた上に、こうやって会えて話せたこと、とても嬉しく思います。今度は家に帰ってきてくださいね。父さんと母さんも待ってますから」
「あぁ。時間が出来たら2人で押し掛けるさ」
「楽しみにしててくれって伝えといてくれよ!」
「はい!」
急に来たせいであまり時間が無いらしく、あっという間にお別れの時間。
約25年ぶりに姉貴以外の家族と会えただけで、生きていて良かった、ここに居て良かったと思えてくる。
「せや、3人で写真撮りはったらいかがです?わいが撮ったりますよ」
「本当ですか!?お願いします!」



「今日は楽しかったな姉貴!」
「そうだな。次は私らが行く番だ。時間作っとけよレイバー」
「それはこっちの台詞だっての。姉貴のが忙しいだろー?」
「お前が仕事サボってるからだろうが」
「はい……」
今度家に行った時も、家族全員で写真撮りたいな。
そしたら俺の部屋に2つを隣同士で飾って、毎日元気を貰うんだ。

12話 あとがき

お久しぶりですラリンです。

新キャラ登場!ですが彼女は本編にはもう出てきません。

さようならオラシオン、2の島のストーリーを増やしてくれてありがとう。

 

 

前回繋ぎの話しと書きましたが、私にとっては2の島編全部繋ぎの話しみたいなもんです。すみません!!

今回の話しは余りにも少ない2の島編を増やす為に入れたものなので、後に続くものよりも考えた日付が新しい話しとなっております。

 

 

 以前何処かで言ったように、レイバーとオルコの過去は番外編で書いている途中なので、次か次の次くらいに来ると思われ。

軽く半年放置してます。早く書いて私。

ではではまた次回!ラリンでした〜!

 

幻石〜5つの石を探す旅〜 第12話

王女であるシャンから、伝説の石、幻石を守る5人の人を探すという勅命を受け旅をしている白姫、ベネジクト、真騎、レストの4人。
しかし幻石の守り人とは幻石そのものであったことが判明する。
最初の守り人、時を司る幻石である時節 詩貴(じせつ しき)を仲間に迎え入れ、駄々をこねる白道をなんとか引っぺがし、歩みを進めていた。



第12話「いざ!2の島へ!」



「船が出港したばかりだったとは……完全に頭にありませんでした……」
「うちの魔法があってよかったねー」
港についた時には丁度船が出港した頃。
歩いて6の島まで引き返す訳にもいかず、ベネジクトの草魔法を使って帰ってきたのだ。
「城に顔でも出したいところですが、急がなければなりませんのでもう2の島へ行きますよ」
「えぇー!?ちょっとでいいからさー買い物しーたーいー!!」
「駄目です。旅が終わってからにしてください」
ちなみに詩貴は石の姿になり、レストのポシェットの中に入っている。
レストは常に真騎の背中で寝ているため、実質真騎が持っていることになるが。
「真騎のケチー!!いいよ行こう!2の島でしょ!!」
頬を膨らませながら、またもや先陣を切ったベネジクト。
残りの3人はそれを追いかけ、無事に2の島門《ツーゲート》を通過した。



6の島と2の島都心部《ツーエリア》を繋ぐ道の途中。
大きな魔物が道を塞いでいた。
さらにそれは今にもこちらに襲いかかろうとしている。
「何よやろうっての?雑魚に用はないんだよねー」
杖を構え、魔法を発動させようとした瞬間。
「……だめ!!」
「えっ!?あっ!」
突然レストが起床し、攻撃を止めさせた。
しかし止めきれず、放たれてしまった小さな火魔法が魔物の方へ飛んでいった。
腕の立つ魔法使いだからか運が悪いからか、真っ赤な火の玉は魔物へ直撃した。
「あ、やば……」
魔物の毛皮を瞬時に焦がし、その部分だけ皮膚が露出している。
それに気づいた魔物は、さらに怒りを増幅させた。
そして襲ってこようとしたその瞬間。
何故かピタリと動きが止まった。
「え?止まった……?」
「お主が何かしたのではないのか?」
「うちは何も……」
真騎がやったのかと、2人は少し後ろにいた真騎を見る。
と、そこには普段寝ているだけのレストが立っていた。
「その子は僕のお友達……わざとじゃないって言ったら許してくれた」
「え?あんた何も喋ってないじゃん?なんで?は?」
「……お話しできるの。頭の中でお話しするの」
頭の中で、とは所謂テレパシーのようなもの。
レストは魔物の思考を読み取ることができる生まれながらの才能を持っているのだ。
その上空間能力にも長けており、首からぶら下げている笛で、契約を交わした魔物を召喚することができる。
シャンがレストを選んだのもこの為だろう。
しかし純血のシルフでありながら魔力が少なく、草魔法の威力はとても弱い。
「じゃあその魔物は今何て思ってんの?」
「……驚かせてごめんね。僕が捕まってると思ったって……」
「勘違いにも程があるのぉ。人さらいだと思われておったとは」
申し訳なさそうにする魔物。
その仕草はまさに愛くるしいペットそのものだ。
「魔物騒動も収まったことですし、先に進みましょうか」
「……ばいばい、またね」
「もっと笑顔で言えばいいのに。子供らしくさー」
レストは、思い出したように真騎の後ろに隠れる。
彼は女が苦手、故に真騎にくっついているのだ。
ベネジクトの家に言った時も、彼女の母親から泣きながら逃げていた程に。
「警戒心薄れるのいつかなあー」
「しばらくそばに居ったところで変わらんだろうな。根本的な問題を解決せねば」
未だに会話もままならない2人。
レストはほとんど寝ているため、そもそも話す機会があまりないが。
4人は魔物と別れ、2の島都心部《ツーエリア》へと歩みを進めた。


「ちょっと待って長くない?遠くない?」
「もうすぐ日が暮れそうだのぉ」
「また野宿コース!?やだー!!」
あれからだいぶ歩いたが、なかなか目的地へと到着しないまま日が暮れようとしていた。
そして例外なく駄々をこねるベネジクト。
「仕方なかろう。着かんのだからな」
「ベッドで寝たいなんて言わないからー!建物の中で寝たいー!!」
「なんだか申し訳ないです……」
「えっ、謝られたらうちが何かしたみたいじゃん!?」
きっときちんと計画を立てられなかったことを申し訳なく思っているのだろう。
真面目で優しい真騎だからこそ零れた一言だ。
「僕のお友達呼ぶ?」
「え?友達?」
珍しく起きていたレストから、これまた珍しく提案が出された。
当の本人はとても眠たそうにしている。
「テントムシ……お腹の中で寝れるの」
「気持ちだけいただいとくわ……」
ベネジクトのわがままも収まり、その日は何事もなく眠りについた。



「あれではないかの?2の島都会《ツーエリア》は」
1の島都会《ワンエリア》よりも発展していない、自然に近い地区。
その理由は生態系にある。
魔物や妖精が多く住み、進んだ文化を持った人間が極端に少ないのだ。
それ故に人間の方が立場が弱く、魔物や妖精に適した環境、自然が多い作りになっている。
異世界からやって来た人間が一番に来る2の島に、何故人間が一番生息していないのかはいろいろな説がある。
ちなみに2の島の長は妖精シルフである。
「ここは別れて情報収集をしましょうか。お昼頃に、そうですね……あの木の前に集合でいかがでしょう?」
真騎が指さしたのは、一際目立つ大きな木。
大昔からある2の島のシンボルだ。
木の葉は緑ではなく、綺麗な赤色をしている。
「おっけー。うちは向こう行くから」
「ならば我は此方を探そう」
「僕はそっち」
「決まりですね。ではまた後程」
数日間離れることのなかった4人が、初めてバラバラになった。
果たして情報を得られるのは誰なのか……。



真騎が来たのは人気の少ない森の近く。
唯一あった民家の前に、1人の女性が居たからだ。
薄い黄色の短い髪に、紫に輝く目。
何かに一生懸命に祈っているらしい。
その佇まいは儚げで、今にも壊れてしまいそうだ。
「あの……少しだけお伺いしても宜しいでしょうか?」
「私……ですか?」
「はい。幻石を探して旅をしているのですが、ご存知ないかと思いまして」
普通なら笑われるところだが、女性は当然のようにそれに答えた。
「すみません……私にはわかりかねます。そうだ!うちの書庫に古い書物がありますので、その中にあるかもしれません」
「見せていただけたりしますか……?」
「はい。もちろん」
二つ返事で了承した女性は、真騎を書庫の方へと案内する。
決して綺麗とは言えない家の外観とは裏腹に、中の造りは美しく整えられていた。
「申し遅れました。私は光闇 真騎という者です。先程申し上げた通り、現在は旅をしております」
「私はオラシオンと言います」
互いに会釈し合う。
まるで他社の人に会う会社員のようだ。
「……あの、この写真は……」
「ああ、それは私が産まれた時に撮った、家族全員の最後の写真です。姉と兄は、小さい頃に人攫いにあったらしくて……今も行方不明なんです」
「もしかして、オルコとレイバーと言うお方ですか?」
「な、なんで知って……!?」
オラシオンは目を見開いた。
赤の他人、それもついさっき知り合った人に、教えてもいない身内の名前を当てられたのだ。
「合っていましたか!先程あなたを見つけた時から、2人と似ているなと思っていたんです。それにこの写真、お2人ともほとんど変わっていませんよ」
「今どこに!?生きているんですか!?」
真騎にグイッと近づく。
とても真剣で、ほっとしているような悲しげなような表情をしている。
「今はアレス城で働いていらっしゃいますよ。オルコさんは攻撃部隊育成長、鬼教官として有名です。レイバーさんは攻撃部隊隊長、とてもお強いんです。逆に言うと、取得はそれだけですが……」
「良かった……良かったです……」
「え!?あの、えっと!と、とりあえずこれどうぞ!!」
泣き出したオラシオンにハンカチを渡す。
誰もいない家の中なのに、キョロキョロとあたりを確認する真騎。
それは果たして視線を気にしているのか、助けを求めているのか……。
「すみません、泣いちゃって……」
「い、いえ!それだけずっと想っていらしたんですよね。2人に話したらきっと喜びますよ」
「……城に行けば会えるんですよね?」
「はい。ですが入城許可証がないと……そうですね、紙とペンはありますか?」
少し待っていてくださいと言いながら、オラシオンは奥に消えていった。
慌てて探しているのかドタバタと音が聞こえてくる。
バンダナを少し乱して戻ってくると、机の上にそれを置き、真騎を椅子へ誘導した。
「入城許可証……これを所持している者は特別に入城出来るものとする……発行者、光闇真騎……と」
「あの……もしかしてこれって」
「もちろん、あなたが城へ入れるようにするための物ですよ。最後に印を押せば完成です」
城であれば許可証専用の印鑑を押すが、出先で発行する時は代わりに魔法を押すのだ。
指先に力を込めて紙に押し付ける。
許可証を発行出来る者にしか使えない魔法だ。
真騎の場合は黄色に輝く印ができる。
「どうぞ。どうかお2人にあってあげてくれませんか?」
「あ、ありがとうございます!ありがとうございます……!!」
「いいえ、貴方の喜ぶ姿を見る事ができて私も嬉しいです。それに書庫を見せていただくわけですからね。ほんのお礼ですよ」
城の警備が心配になるほどあっさりと許可証を発行した真騎は、その後整理整頓されていない書庫を見てまた仕事をしたそうな……。

11話 あとがき

投稿ペースがだいぶ落ちましたがはたして私が生きている間に完結するのでしょうか。
そんなこんなでもう11話です。
実はここで幻石を連載し始めて、去年の11月ですでに1年が経過しております。
時の流れとは早いものです。
そして1年ちょっとでようやく1の島を脱出します。
作中ではまだ3〜4日しか経っていません。
ゆっくりですが、よろしければこれからもお付き合いくださいませ。



今回の補足ですが、タイトルの通り繋ぎのお話しのためいつもよりグダグダなことをお詫び申し上げます。
守り人を探す理由に少しだけ触れましたね。
詳しい事はその時になるまで、ですよ。
誕生日があと半月程度なのはいつもの如く適当です許して。
この世界の時間や日付は日本と同じです。
どちらも日本から来た人間が伝えたものなので。

それでは次回の更新までしばしお待ちください。

幻石〜5つの石を探す旅〜 第11話

異世界に迷い込んだ少女は、そこで知り合った新しい母親を亡くし、義兄も亡くした。
残ったものは絶望と悲しみだけ。
それが力となって創り出された5つの石を、人々は幻石と呼んでいる。



第11話「繋ぎのお話し」



「あんな小さな子にそんな出来事があったなんて……」
黄色い男性――真騎からこぼれた一言。
幻石が生まれた理由を詩貴から聞いて、皆衝撃を受けていた。
伝説で語られているのは、あくまでも少女が5つの石を生み出したということだけ。
「もしかしてその石像って、アレス城の前にあるあれ?」
「そうさ」
あるのが当たり前になっていてあまり気には止めないが、城の前には当時のままの石像が置いてある。
結界で守られており、汚れもせず、当時の空気が保たれていて、動かすことも壊すこともできない。
「それにねえ、魔法とやらをこの世に生んだのもルシャトリエさ。ルシャトリエを石にしたあと、世界中の石が力を帯びて、一部の動物は進化していった」
一部の動物とは魔物の事だろう。
しかし魔物の魔力はあまり高くない。
ほんの数1000年の出来事ゆえに、不完全な進化なのだ。
「昔からあったんじゃないの!?」
「溢れでた霊力が変化したんだろうねえ。まあ、妖怪だけはその変化についていけなかったってわけさ」
「えぇ〜なんかそれ酷くない?好きで使えない訳じゃないのにぃ!!」
妖怪は能力を持っているから、というのが今のところ有力な説だ。
自分の能力に誇りを持っている妖怪だからこそ、進化を望まなかったのかもしれない。
「仮に魔法が使えたとして、あんたは使わないだろう?」
「うっ、それはそうだけど……でも仲間はずれみたいじゃない?白姫もそう思うよね?」
「別に。外されたのならばそれに入れるよう努力すればよいではないか」
「努力してもできないから言ってるんだよお!!」
これではどちらが親かわからない。
それからしばらく、世間話が続いた。



夕暮れ。
太陽が西に傾き、もうすぐ夜が来る時間。
会話がやっとひと段落していた。
「今日は久しぶりに楽しい1日だったね、詩貴姉さん?」
「ああ、いい刺激になったねえ」
長い時間を生きる妖怪には、この1日もほんの少しの時間だったろう。
その少しの時間でも楽しいことがあるのなら、例え明日が退屈だろうと、生きるのは苦にならない。
「で、今日はもう暗いし危ないから、みんなで一緒に寝よう!」
「そうですね。ですが、おじゃましても良いのですか?」
「ああ、あたし達は構わないよ」
「ええー野宿ー!?さいっあく!!」
ベネジクトは駄々をこねている。
年頃の女の子なのだから、仕方ないと言えば仕方ない。
「流石に布団は仕舞ってないよ…やっぱり地面に直接寝るの?」
「あたしらは木によっかかって寝るからねえ。やっぱりそれじゃあ無理かい?」
「座って寝るってことよね?無理無理寝らんないって」
仕舞っていないとは、きっと鞄代わりの空間のこと。
ベネジクトの空間には飴やガムなど、甘いものが多めだ。
「大丈夫ですよ。万が一にと思って入れておいた私のを貸しますから、それでお休みください」
「万が一に布団って……用意周到すぎでしょ」
「昔少しだけ旅をしていた時期がありまして、その時の名残ですよ」
そう言うと、真騎は異空間から布団を取り出した。
ベネジクトはそれを受け取り、地面に敷いて準備を整える。
「ふかふか!ありがとう真騎!」
「いえいえ。お役に立てて何よりです」
それに対して白道と白姫はというと。
「ねえねえ白姫ー、今までのこといっぱい聞かせてー!」
「お主に話すことなど何も無い。同じような日々を過ごしておっただけだ」
「咲姫さんとはどうだった?」
「どうと言われてものお……普通だったと思うぞ」
「普通じゃ分かんないよー!!もっと具体的に!!」
またもやどちらが親か分からなくなる会話を繰り広げていた。
2人の間にぽっかりと空いた時間を埋めようとしているのだろう。
しかし白姫には伝わっていない……と言うよりは知らない人にベタベタされている感じのようだ。
白姫は白道の記憶が全く無いのだから無理もない。
「すみませんが少し席を外させていただきます。城と連絡をとる時間ですから」
そう言うと真騎は、森の闇に溶けていった。



今日も昨日と同じように、シャン、サージャ、レイバーが通信室に集まっていた。
そして同じように通信を始める。
「光闇さん、聞こえますか?」
『はい、大丈夫です。聞こえていますよ』
「どうだったんだ?守り人は見つかったのか?」
『はい!無事に時の幻石の守り人、発見いたしました』
シャンはほっと胸をなでおろす。
調べていたものが事実だったのだと、改めて実感しているのだ。
「その調子で、他の方々もお願いします。出発前にも言いましたが、急いでくださいね」
『わかっていますよ。ですが、何故そんなに急がれるんですか?』
「そ、それは……」
居もしない真騎から目を逸らすようにそっぽを向くシャン。
冷や汗もかいている。
「シャン様、何を隠されていらっしゃるのですか?正直にお答えください」
「俺らにも言えないことっすか?」
「えっと……その、忘れてて……」
さらに誰とも目を合わせないよう下を向く。
「聞こえません。ハッキリ仰ってください」
シャンは意を決して顔を上げ、声を張って答えた。
「忘れていたんです!私の20歳の誕生日までにあの5人を集めて、もう一度封印し直さなければならないことを!!」
それを聞いた全員、真騎、サージャ、レイバーが目を丸くした。
シャンの誕生日まではあと半月もないからだ。
いくら1人目がすぐ見つかったとはいえ、他もそうとは言いきれない。
「本当ですかシャン様……?それに封印って……」
「記憶違いでなければ本当です。封印はもちろん、これのことです」
左目とは色の違う右目を指さす。
現在その目は見えてはいない。
『……もし期日を過ぎればどうなりますか』
「10年前の封印は解け、もう一度暴れ回るでしょう。あの方に取り憑いたままかどうかはわかりかねますが」
「それなら俺達も捜しに行った方がいいんじゃねえんすか!?大人数で捜せば間に合うんじゃ……」
「駄目です!!そんなことをすれば民を不安にさせてしまいます。それに兄様にも御迷惑をかけてしまうでしょう!!」
静寂。
それは4人が揃った時にはあまり流れることのない時間。
常に誰かが口を開いていて、それをうるさいと思いながらも皆耳を傾ける。
それ程重い話題なのだ。
『きっと間に合います。いえ、間に合わせます。なのでシャン様はいつも通り、仕事をなさっていてください』
「真騎……はい。わかりました。貴方が言うなら安心です。ですがこの事はくれぐれも内密にお願いしますね」
『羽前さん達にもですか?』
「時がくるまで、適当に誤魔化しておいてください。あまり広めたくありませんから」
真騎がわかりましたと返事をしたところで、この日の通信は終了した。



翌日の朝。
鳥はさえずり、少しの風が木々を揺らす。
そして東から登っている光が、皆の目を刺激した。
「眩しい……直で当たってんじゃん……」
「あ、おいこら二度寝するでない!!」
ベネジクトは光と声を遮るように、布団で自分を覆い隠した。
「ベネジクトさん起きてください。急がないといけないんですから」
「だってまだ夜が開けたばっかりじゃん……もう少しぃー」
旅をするようになってから恒例のやり取りである。
そしていつもずるずると引きずり、出発はこれから約3時間後程。
起きたら起きたで用意が遅く、時間をどんどん削っていくのだ。




それからいつも通り約3時間。
やっと支度が整い、2人と別れの時間が訪れた。
「じゃあね白姫。僕はずっと待ってるから、餡ちゃんと仲直りしたら絶対戻って来るんだよ!!」
「お主が来れば良かろうが。……気が向いたらな」
「うえええん寂しいから絶対来てよおお待ってるからあああ」
白道は泣きながら、微笑んでいた白姫を抱きしめた。
昨日会った時とは違ってそれは一方的ではなく、白姫もすんなりとそれを受け入れている。
「なんか違和感。会って3日だけど素直にハグとか白姫じゃないわね」
「お主斬られたいのか?」
「喧嘩はいけませんと何度も言ったでしょう。ではお2人とも、お世話になりました」
「また会おうねー!」
元気に手を振る白道と……その隣で呆れた顔の詩貴。
詩貴は一歩前に出ると、4人を引き止めた。
「ちょっと待ちな。あんたたち何しにここへ来たのかもう忘れたのかい?」
「守り人を探しにだ。それくらい覚えておるわ」
「……探して終わりじゃあ、あたしらの存在を確認しただけじゃないか」
「詩貴さんの話しいっつも遠まわしすぎ!!もっとわかりやすく言ってよー」
詩貴ははぁとため息をもらし、真騎の顔を見る。
真騎なら理解してくれているだろうということなのだろう。
しかし真騎の頭にも珍しくはてなが浮かんでいた。
「もしかして、何のためにあたしらを探してるのか聞いてないのかい?封印を……」
「あ!!わ、わかりました!!」
詩貴の声を遮るように、大きな声で言葉を返した。
おそらく昨日シャンに口止めされたためだろう。
まだ理由は言うな、と。
「着いてきていただけますか?時節さん。あなたがいた方が、他の守り人達も見つけやすくなりますし」
「ああ。もちろんさ。でもあたしはあいつらの居場所も今の姿も知らないよ。もうずっと会ってないからねえ」
「えっ、そうなんですか!?」
詩貴は扇子を広げ、口元を隠す。
そして高らかな笑い声を上げ、こう続けた。
「あんたたちと居ると退屈しなさそうだ。よろしく頼むよ、もうすぐくるその時まで」

10話 あとがき

めんどくさ……ではなく詰め込みすぎたうえに駆け足だったのでわかりづらかったと思いますが、流れが分かればそれでいいです。
もともとどこに入れようか悩んでいた話だったのであまり考えていませんでした。
聖職者なんて辻褄合わせに付け加えた設定ですからね!
これって当時だと魔女狩りとかいうのされてたんですかね?
だから歴史わかんないって言ってんだろ!!


守り人の名前が出てきてないのはもちろんわざとですので、彼らの出番まで名前は待っていてください。
とはいえ全く公開していない訳ではないです。
特別秘密ではありませんし。


では、次回も気長にお待ちください!!