幻石〜5つの石を探す旅〜 第17話
どこかの屋敷の庭で、桃色の髪飾りを付けた黒髪の男性……否、女性とも見て取れる中性的なその人物は、いつもと変わらぬ日々を過ごしていた。
いつも通り手入れされた大層豪華な庭を、いつも通り眺めながら歩く。
しかし今日は1つだけ、いつも通りとはいかない出来事があった。
「……矢文?」
木造の屋敷に綺麗に突き刺さった一本の矢文。
それを引き抜き、括りつけられている紙を解く。
何の変哲もないただの紙切れだ。
中には達筆な文字で、こう書かれていた。
『1週間後に戦を仕掛ける』
「なんだ?悪戯か?」
くだらない、とその紙を捨てようとした時。
ちらっと見えたその2文字に、悪戯ではないと確信を持った。
それは手紙を読んだ人物がよく知る名前であった。
何故なら……。
「これが本当なら……くそっ!!」
それは昔、その名の者が自分の付き人だったからである。
続きを読む幻石〜5つの石を探す旅〜 第16話
「なんで探すのに30分もかかるの!!すぐそこじゃん!!」
見事にフラグを回収し、船の持ち主を探すのに3倍の時間を費やした4人。
歩いて10分もかからない目的地を目指して、周りをぐるぐるとしていたのだ。
「お主が途中から反対方向を目指したからであろう。地図も読めぬのか」
「あんただって反対しなかったじゃん!うちのせいじゃない!」
「問い正したのに地図も見せず先に進んだ貴様に責任があると思うがな!」
「いいじゃないですか、見つかったんですから。終わりよければ全てよしですよ」
はいと言わせんばかりの笑みで二人を宥める真騎。
聖母とまで謳われた笑みである。
「お主の笑顔、時々恐怖を感じるのだが……気のせいかのう」
「うちも同意見」
「ふふ、私はただ笑っているだけですよ。早く行きましょうね」
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「王女様がねえ。やーっと探し当てたのな、俺らの存在」
あれから数十分。
なんとか説明して理解して貰う事が出来た。
最後は詩貴が何か言っていたようだが……。
「やっと、とは?」
「んん?そろそろバレても良いんじゃねえかなって思っただけだ。幻石の在り処もな」
長年に渡り伝説としてしか語り継がれなかった幻石。
それがつい最近シャンによって確定された。
幻石は存在して、さらには守り人までいること。
守り人が幻石その物であることは特定できなかったが、それだけでも凄いことだ。
「王女様は本で見てたって、真騎言ってたよね?」
「はい。珍しく図書室に篭っていましたね」
「じゃあその本書いたの、誰?」
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