幻石〜5つの石を探す旅〜

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幻石〜5つの石を探す旅〜 第2話

この世界には魔法が存在する。
属性は、火、草、水、光、闇の5つ。
1人が使える属性は3つまで。
そう思われていた……。


第2話「天の才能を持つ少女」


澄みきった青い空、活気づいた町並み。
ここは城の前の階段を降りた城下町。
「あーあ、もうこことはお別れかー」
「何も名残惜しいことなどなかろう。故郷ではないのだろう?」
「わかってないわねー、6の島どんだけ楽しいと思ってんの?」
6の島は世界で最も商業が盛んな場所。
食べ物はもちろん、服や雑貨屋までなんでもござれだ。
ただし日本でいう東京をはじめとする、都会と呼ばれる場所のような雰囲気ではない。
昔の西洋のような城下町そのものだ。
「では、まずは1の島から行きましょうか」
「えー!?他の所じゃだめなの!?」
「これはシャン様から言われていることなので……」
「まあいいか……どうせ他の島も行くんだし」
ベネジクトは食べ終わった飴の棒を火魔法で燃やし、灰にした。
そして新しい飴を咥える。
今度はメロン味らしい。
「ベネジクトさん、今髪が――」
「よっし、さっさと行って見つけちゃお!」
真騎の声は届かず、先程とは真逆のテンションで先陣を切った。


数時間後。
"1の島都会《ワンエリア》"が見えてくる。
レストは疲れたのか、真騎の背中で寝ていた。
「そう言えば、情報収集ったってどうすんの?図書館とか使い物にならないでしょ」
「そうなんですよね……」
王城の図書館でようやく手に入った情報が、そこらの図書館にあるはずもない。
ましてや見つかった情報は守り人の存在のみだ。
3人で思案していると、女性がベネジクトの前にやってきていた。
「ここにいたのかいベネちゃん!?大変だよ!!あんたん家の前に魔物がでて、今ヨウソ君が一人で相手してるって!!」
「うそ!?ありがとうおばちゃん!!」
ベネジクトは草魔法を使い、ワープしてしまった。


「無理しないでね、ヨウソ君!」
「だ、大丈夫です!!っ!?」
魔物の攻撃をよけきれない。
そう思って腕で顔を覆った時だった。
「こいつには水魔法だって言ってたじゃん!水魔法、その1!!」
魔物の手がヨウソと呼ばれた青年の頭上に落ちる寸前で、何者かによって阻止された。
その者によって放たれた水の鎖が魔物を締め付ける。
その者とはもちろん。
「ベネジクトちゃん!もう帰ってきたの?」
「んー、半分正解半分不正解ってとこかな」
話しながらも右腕を頭上でくるくるとまわし、魔物をどんどん締め付ける。
そこに、残りの3人が合流した。
「ワープなぞしおってからに……せめて走って行かぬか!!」
「意外と近くで助かりましたよ」
「家がピンチだって時にちんたら走って行くわけないじゃん」
くるくるとまわしていた腕を思いっきり振り下ろすと、魔物は跡形もなく消えてしまった。
「見つかったし、魔物も退治完了。結果オーライってやつでしょ」
「ねえベネジクトちゃん、この人達は?」
「そうそう、王女様直々に命令されてね。こいつらと一緒に幻石の守り人を探すの」
理解できなかったのか、ヨウソは首を傾げている。
それはもうフクロウのように。
「幻石の守り人?」
「あーはいはい、自己紹介込で説明するから。家行こ」
案内されて、全員でベネジクトの家にむかった。



「――というわけ。わかった?」
「うん、ばっちりだよ!」
一通り説明も終わり、ヨウソの理解も早かったため、次の話題に移る。
「それで、これから島1周するんだよね?」
「そうなるわね」
「だったらいろんなお話聞かせてね?お土産はこれでいいよ!」
「めんどくさっ。あんたも行けばいいじゃん、1人で」
「えー!?やだよ!1人は寂しいよ!その前に学校あるから行けないよ」
「そんなの大人に任せりゃいいじゃん。だいたいなんであんたが先生してんの?」
「でも楽しいよ?」
ヨウソは母校の先生をしている。
普通の学校ではなく、魔法を勉強する学校だ。
そんな他愛もない会話が続く。
2人で淡々と話すためかなれていないためか、白姫達が会話に入ることはなかった。
そんな時、奇妙な音が聞こえてきた。
例えるなら何かが光るような音、ピカッではなくパアアアッといった感じだ。
それはこの世界では聞きなれた音。
音を聞くやいなや、ベネジクトは反射で魔法を発動する。
「闇魔法、その21!」
ベネジクトの魔法で生み出された弾のようなそれは、音のした方に向けて発射された。
これも先程と同じ音がしている。
つまり音の正体は誰かの魔法だ。
「あー、そういやここ家ん中だったわ」
弾はコンクリートの壁を突き破って外に出る。
人に当てるとは思えないくらいの威力だ。
「きゃあっ!!」
ベネジクトが使った魔法は見事に命中したようで、それ相応の声が聞こえた。
全員外に出て状況を確認する。
家の前にいたのは、ベネジクトと同い年くらいの女の子だった。
コンクリートを突き破ったことで威力が落ちていたのか、目立った外傷は見られなかった。
「あら、今日はたくさん人がいるのね」
「そう、だからうちは忙しいわけ。帰ってくんない?」
「せっかく来てあげたのに残念ね。いつもみたく遊びたかったのに」
「うちは暇じゃないの。っていうかあんたいっつも負けるじゃん」
「うるさいわね!あんたたち、そいつら引っ捉えなさい!!」
「なっ!?な、何物だ!?離さぬか!!」
声のした方にベネジクトが振り向く。
そこには何者かによって捕らえられてる白姫、真騎、ヨウソがいた。
レストは部屋で寝ているため、被害にはあっていない。
手を掴んでいるのは1人につき女性2人。
性別のわからない白姫はともかく、男である真騎とヨウソは簡単ではなくとも外せるはずだ。
「水魔法?」
そう、水魔法。
これのせいで抵抗しても無駄だったのだ。
水魔法はサポートを得意とする。
今使われているのはおそらく力を増強させるものだろう。
「あれもあんたのお仲間さんってとこ?」
「正解。さあ、これで邪魔者はいないわ!今度こそ負けないから」
にやりと笑った少女は、自分の杖を手に取る。
魔法は杖がなくても使えるが、力が弱いため皆杖を用いる。
しかし妖精は別だ。
「……さっさと片付けてやるからかかって来なよ。今日は何魔法がお望みかな?」
「舐めた真似を!!」
杖の宝石が緑色に光る。
草魔法を使うらしい。
「草魔法、その7!!」
大量の木の葉が現れ、視界を狭める。
「火魔法、その9」
すかさず火魔法で木の葉を焼き払う。
ちなみにベネジクトの杖はクリスマスキャンディ型だ。
「魔法は一日一夕じゃ変わんないよ。もう終わらせるから」
杖が群青色に染まる。
放たれた大きなシャボン玉は、少女を包み込んだ。
「水魔法、その2」
「ちょ、ちょっと!!出しなさいよ!!」
さらに放たれ、後ろにいた白姫たちも包む。
そして強制的に手も離された。
「いいわよね、あんたばっかり。ずるいわ」
「は?いきなり何?」
「認めたくないけど天才には勝てなくて仕方ないのかもね」
それを聞くと、口に含んでいた飴玉を勢いよく噛み砕き、怒りの表情を浮かべた。
そして少女に近づき、泡を突き破って胸ぐらを掴む。
「二度と天才なんて言葉、出さないでくれる?」
「は、はあ!?意味がわからないわ。普通嬉しいでしょ、褒め言葉よ?」
「……昔っからうちの努力なんて見てくれない。天才だから、素質があるからって褒めてなんてくれない。それどころか今じゃいいようにこき使われてる。こんなことになるなら、魔力なんていらなかった、才能なんていらなかった!!もう天才なんてうんざりよ!!」
叫んだとき無意識に力が働いたのか、掴んでいた右手から火魔法が使用された。
女性の襟が焦げ、首には火傷を負ってしまった。
「っ!?ベネジクトさん!!手当てをしますので魔法を解いてください……!?」
真騎が呼びかけるが、それは無意味に等しかった。
なぜなら――
「ごめん……わざとじゃないから……」
既に手当てが行われていたからだ。
それもベネジクトの手によって。
「あなたはもしかして……」
火魔法、燃焼、攻撃に使用。
草魔法、ワープに使用。
水魔法、バリアに使用。
闇魔法、攻撃に使用。
光魔法、手当て、即ち回復に使用。
「うちは5つの属性、全部使えるよ」
人は普通、属性は3つまでしか習得できないと思われていた。
ベネジクトという人物が現れるまでは。