幻石〜5つの石を探す旅〜

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幻石〜5つの石を探す旅〜 第5話

「ベネジクトさん……もしかしてあなたは!?」
「そうよ、火、草、水、光、闇……うちはこの5つの属性全部使える」
普通、1人が使える属性は3つまでだと思われていた。
ベネジクトが覚醒する前までは。


第5話「初日の終わり」


「だが我が読んだ書物には、3つまでだと記されておったぞ」
「使えるんだもん、そんなこと言われても困るし」
怪我をして治療されていたチモールが起き上がる。
どうやら治ったようだ。
「知らなかった。そうよね、あんたはいっつも1人で頑張ってたものね」
「な、何よいきなり?」
「だから!!謝ってるの!!」
「分かるわけないじゃん!不器用にも程があんでしょ!?」
「2人とも、喧嘩はお辞めください!」
真騎によってなんとか争いはまぬがれた。
謝罪で喧嘩など、とてつもなく馬鹿馬鹿しい。
「そうそう、あんたしばらく帰らないんですってね?」
「そうよ、大人に振り回されんのはもうごめんだもん」
「シャンとやらも大人であろう?」
「これのがまし。ここにいたら好きなこと何もできないし。全部うちに押し付けるんだから!」
去年行われた表彰式から、ベネジクトは毎日仕事を任されていたのだ。
魔物退治や住民からの依頼までなんでも。
これらは普通、大人がやることだ。
「それはいけないことになっていた筈ですが……」
「そうなの!?」
「今度連絡の取れるときにシャン様に伝えておきます」
ベネジクトの顔に笑顔が戻る。
それほど今までの生活が苦痛だったのだろう。
「あなたたちもごめんなさいね。押さえたりして」
「それは構わんが……さっさとこの泡をどうにかせぬか」
「いいじゃない、一時そのままで」
「僕は抜けられたけどね」
「なにぃ!?お主いつの間に!?」
ヨウソはかけられた魔法を自分で解いていた。
「だってそれ初歩的な魔法だし。水属性使えるなら簡単に出られるっての」
「早う出さんか!!窮屈だ!!」
「わかったようるさいなぁ」
ベネジクトは何も持たない右手を握り締めると、途端に泡が弾けた。
少し浮いていたため、白姫は体制を崩し、その場に尻もちをついた。
「ようわからんことに巻き込んだ挙句このざまとは。他人をどう思っておるのだ」
「他人は他の人って書くのよ?うちには関係のないどうでもいい人」
「この小娘め……!!」
「小娘なんてよく言うじゃん。あんたも歳変わんないでしょ」
「何を言うか。我は1756歳だ。お主は歳も見極められんのか?」
その場にいた真騎を除く全員が一瞬固まる。
それもそうだ。
いきなりこんな数字を言われたら、驚かない方がおかしいだろう。
それに加えここは都心部
森を好む長寿の生物は滅多に目にしないのだから、見極めるどころか存在すら知らない者もいるくらいだ。
「え、何?あんた妖怪なわけ?」
「でも妖怪ってもっと奇怪な生き物じゃあ……」
「妖怪にもいろいろいるのでは?それとも化けているんですの?」
「お主ら覚悟せい」
「まってください!!落ち着いて!!」
飛び掛ろうとした白姫を咄嗟に押さえつける。
「落ち着けるか!!立派な悪口だぞ!?特にそこのおのこ!!!!」
「だって想像と違ったから……」
「それに、我は妖怪と人間の混血だ。人型でもおかしくはなかろう」
「へえー。妖怪に混血なんているのね。どっちが妖怪?」
「ん?どっちが妖怪とはどういう……」
意味だ、と言いかけたその時。
ベネジクトの家からドタバタと音が聞こえてきた。
その次には、2階の窓から何かが瞬間移動のような速さで真騎の背中に飛びついた。
「わっ!え?何ですか!?」
そこにいたのは、今まで寝ていたレストだった。
この様子だと、何かから逃げてきたらしい。
「あらー、速いわねぇその子!」
窓から顔を出したのはベネジクトの母親だ。
「ちょっとママ!?レストに何したの!?」
「そろそろご飯だから起こしに行っただけよぅ。そしたら飛び出しちゃったの」
「レスト君?何か怖い夢でも見たんですか?」
「……女の人……嫌い」
半泣きで真騎の背中にしがみついている。
余程嫌いなのか、ベネジクトの母親を睨みつけている。
「私なにかしたかしら?」
「そういやそんなこと言ってたっけ」
「真騎ばかりに付きまとうのも納得がいくのう」
「何もしませんから大丈夫ですよ」
皆口々に感想を告げる。
レストは9歳だが、母親とはどう接しているのだろうか……。
「そんなことより、ご飯食べて、ぐっすり寝て、明日元気に旅立ちなさい!」
「数日前お城に行くときもしたよね!?」
「やぁねえ。今度はみんなでやるのよぅ!」
どうやら優しい母親なようで、その日はベネジクト家に泊まらせてもらい、夜を明かした。


「そろそろですね……光闇さんは覚えているでしょうか?」
「真騎なら大丈夫ですよ。レイバーなら別ですが」
「そうですね」
「なんでそこで俺の名前が出るんですかシャン様!?あとサージャ!!ふざけんなよ!!」
白姫達がベネジクト家に泊まった夜。
その頃アレス城では、いつも通りのやり取りが行われていた。
「事実を述べたまでです。脳みそまで筋肉でできているようなあなたには、記憶力というものが皆無ですからね」
「あ、その罵倒いい。もっと言って!!」
レイバーと呼ばれたガタイのいい男性は、とんだマゾスティックなようだ。
橙色の逆だった髪型で、着けている首輪には鎖が繋がれている。
鼻の頭に痣があるのが特徴的だ。
「そろそろ初めてください。あまり遅くなると迷惑になりますから」
「承知しました」
前に手を出し、目を瞑る。
そして話しかけるように、言葉を紡ぐ。
「聞こえますか?光闇さん。サージャです」
『聞こえていますよ。私の声は届いていますか?』
「もちろんです」
これは草魔法を使った、いわゆるテレパシーというものだ。
サージャはアレス城の情報部隊隊長で、役名の通り情報に関することを取り締まっている。
赤髪に緑色の目、黒淵の眼鏡をしていて、見るからに秘書といった感じだ。
背中にはたたんでいる羽が見えるので、色から察するにサラマンダーとシルフのハーフだろう。
「初日の成果を報告お願いします」
『はい。今日はワンエリアに到着し、ベネジクトさんのことをよく知ることができました。現在はベネジクトさんの家に泊めていただいており、明日はワンルーラルに出発する予定です』
「はぁ!?まだ1日しか経ってないんだぞ!?」
「いくらなんでも早すぎやしませんか?」
『ですがここには守り人はいないと、ワンエリアで知り合った全員に断言されてしまいまして……』
「根拠の無いことをそうも自信満々に言えるとは」
『私もそう思ったのですが、ワンポイントまで行って、いなければ戻ろうかと』
「まあ……急いでくれるならば探し方は問いませんが、くれぐれも見つからないなんてことはないようにお願いしますね」
『わかっていますよ』
その声からは、真騎が微笑んでいる顔が容易く想像できた。
とは言ってもテレパシーなので、真騎の方は実際に声を出している訳ではないが。
「ではそろそろ切ります。明日もこの時間帯に通信しますのでお忘れなく」
『あ、ちょっと待ってください』
「なんでしょう?」
『本人に聞いたのですが、本来大人がやるべきことをベネジクトさんがやらされていたそうなんです。一応連絡しておきます』
シャンがイラッとした顔を浮かべた。
だがまたすぐにいつもの表情に戻る。
「そうですか。私から1の島の長に伝えましょう。ベネジクトさんにも言っておいてください」
『はい』
「では切りますよ。また明日」
サージャが手を下ろし目を開いた。
それを確認するとシャンがくるっと踵を返してドアに向かう。
「さあ、時間が遅かろうが関係ありません。私の仕事を増やしたことを後悔させてあげましょう」
「そうとう怒ってんなありゃあ」
「きちんとやってくださるなら問題ありません」
あの後長がどうやって怒られたのかは、側近である真騎さえも知らない。
こうして旅の初日は終わりを迎えた。



「忘れ物はない?大丈夫?」
「大丈夫だって言ってんでしょ!いつ帰るかわかんないけど、世界一周の話たくさん聞いてもらうから楽しみに待っててね」
「僕も応援してるからね!ここのことは任せてっ!」
「私も一緒に警備致しますわ、だから心配ご無用ね」
翌日の朝、何故かヨウソとチモールも加わり、別れの挨拶をしていた。
「別に好きで守ってたわけじゃないんだけど……」
ベネジクトのそばにチモールが小走りで駆け寄り、耳に顔を近づける。
小声で何か言っているようだ。
「……!?何言ってんの!?そんなんじゃないって言ったでしょ!!」
「ふふふ、わかりやすい反応だこと。だから早く帰ってこないとどうなるかわからないから」
小悪魔のような微笑みが、チモールの顔には浮かんでいた。
一方ベネジクトは耳まで顔を赤くしている。
「昨日はお世話になりました。ベネジクトさんは責任を持って面倒見ますので、どうかご安心ください」
「ちょっと真騎ってば何それ!?うちが子供みたいじゃない!!」
「じゃあよろしく頼みますね」
「あーもう!!さっさと行こう!!」
向かう方向へと足を進める。
速度はいつもより速い。
「待たんか!これだから小娘は……」
「速い……」
「レスト君、私の背中にお乗りください」
2日目。
4人は次の目的地、1の島田舎《ワンルーラル》へと歩き出した。