幻石〜5つの石を探す旅〜

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幻石〜5つの石を探す旅〜 第6話

ようやく家を離れたベネジクト達は、ワンエリアの出口へと向かっていた。
ベネジクトのみがぶつぶつと愚痴を呟いている。
そんな時。
「ベネジクトさん!待ってください!」
中年の男性に声をかけられ、足を止める。
「今まで申し訳なかった……これからはみんなで――」
「言葉なんていらないから。態度で示してくんないかな?口だけならなんだって言える、大人はみんなそう。偉っそーに命令してさ、くれる予定だった報酬なんてくれたことないよね?それにさぁ……今頃言ってきたってことは、シャン様に言われたからでしょ。違う?」
図星だったようで、男性は黙り込んでしまった。
ベネジクトはフーセンガムを吐き捨て、それを燃やす。
そしていつもからは想像もつかない冷たい目と声で告げる。
「うちはあんたらのために魔法使ってんじゃないから」
男性はそのまま呆然と立ち尽くしていた。

第6話「手がかり2つ?」


「あーあ!朝から気分最悪!!」
「そんなに大人、嫌いですか?」
真騎が笑顔で、でもどこか寂しそうに尋ねる。
それは自身が大人だからだろう。
「昔っからさ、ここの大人達って自分でやろうとしないんだよね。人任せで……逃げるだけ。頼りになんないの」
「私がいてもいいのですか?」
「別に。大人ってまとめてるけどママやパパは好きだし、しっかりしてる大人もいるくらい知ってる。真騎はさっき言った通りちゃんとうちの面倒見てくれてるし」
「ふふっ。よかったです、そう言ってもらえて」
いつもの優しい笑顔に戻る。
それはまるで聖母のようにも見えた。
回復隊隊長の名も伊達じゃない。
「そう言やさっき思い出したんだけどさ、うち幻石の守り人見たことあるかもしんない」
「それは誠か?」
誰の方にも向かず、進行方向だけを見つめて話を続ける。
「8歳くらいの頃、ヨウソと一緒にワンルーラルより奥の森……ワングローブまで探検に行ったことがあってね」
「ちょっと待ってください。子供2人でそんなに遠くまで行ったんですか?」
「うん。帰ってきたらめちゃくちゃ怒られたけどね」
あはは、と苦笑いを浮かべる。
ワンエリアよりも奥に存在するワンルーラル。
それのさらに奥にあるのだから、子供の足だと一週間くらいはかかるだろう。
よく帰ってこれたものだ。
「森に入った時、お姉さんを見かけたんだけど……一瞬目を離した隙に居なくなってて、綺麗な青い石が落ちてたの。その時はただのスペルストーンだと思ってたけど、今思うとなーんか違うなーって」
「それが幻石かも……というわけか」
「そう。可能性は0じゃないでしょ?」
「容姿の特徴などは覚えていませんか?」
少しの間思案する。
「ほんとに一瞬だったからなあ、でも青い着物着てたのは覚えてるよ」
「着物は着替えれば違う物ではないか。手がかりにはならんな」
厳しい判定だ。
「あ、あと髪がエメラルドっていうかなんていうか……とりあえず綺麗な翠色だった」
「これならある程度絞れますね」
「しかしこんなに身近に情報源があるとは。もう少し早う思い出せんかったのか?」
「うるっさいなー、無いよりましでしょ!?」
「2人とも!!」
あわてて真騎が止めに入る。
このシーンは何度目だろうか。
かくして白姫一行は、ワンルーラルへと向かった。



あれから数時間程。
今は昼時だ。
「真騎ーお腹空いたー!」
「困りましたね……何処も木ばかりです」
ワンルーラルまでは小屋さえないので、食料はあらかじめ持っていくか現地調達しか方法はない。
「すみません……先に謝っておきます。私、料理はからっきしでして……」
白姫とベネジクトが驚きの表情を見せる。
なんでもできそうな真騎が料理不得意宣言を出したのだから、無理もない。
「意外ね……真騎ってばなんでもできそうなのに」
「びっくりにも程があるぞ」
「すみません……」
これで希望は失われた。
――と思われたのもつかの間。
「仕方ない。我がやろう」
「えっ、あんたできるの?」
「当たり前だ。何年生きていると思っておるのだ?」
森の奥で何百年と独りで生きてきた白姫にとって、料理など容易いのだろう。
森に住んでいるのだから、木の実などにも詳しいはずだ。
「だが料理とはいっても調理はできんぞ」
「え、それ料理じゃないじゃん」
「食べられるのか食べられんのか見分けられるだけでも良いと思え」
「正論ですね」
「真騎が言うの!?」
とりあえず、4人は食料を探すため森の奥に入っていった。


「我が住んでおる所とは大分違うのう、見かけない物ばかりだ」
「じゃあ見分けらんないじゃん!!」
「仕方なかろう」
至って冷静な白姫に対し、少し気の立っているベネジクト。
食べ物の事となると態度が真逆になるようだ。
「あーもうお腹空いたー!」
「……そろそろ突っ込んで良いか?」
ベネジクトの口にはいつも通り飴がくわえられている。
「これでお腹が満たされるとでも思ってるの?」
「食べているだけましではないのか?」
「無理があんでしょ!?」
そんな2人をよそに、真騎は背中に居るレストへと視線を移す。
「ん……」
「起きましたか、おはようございます。あ、しかし今はお昼ですね……こんにちは?」
真騎にガン無視をかまし、背中から飛び降りる。
すると赤い木の実が生っている木へと駆け寄った。
「あれ……食べられる」
「林檎じゃん!なんで気がつかなかったの!?」
「お主にも責任はあるだろう!?」
「これで一安心です……」
昼食を無事に取り終え、4人は再び歩き始めた。



それからまた数時間。
目的地"1の島田舎《ワンルーラル》"へと到着した。
もう日が沈もうとしている頃だ。
「やっとついたぁ〜疲れたぁ〜もう駄目歩けない」
「そうですね、何処か泊まれる場所を探さないと……」
「宿など見当たらんぞ?」
「お腹すいた」
到着早々ピンチに立たされた4人。
周りには田んぼばかりだ。
静かなその場に、車のエンジン音が響いた。
「人!?宿の場所聞いてくる!!」
車といっても耕運機、田んぼや畑を耕すあの機械なのですぐに追いついた。
しばらくするとこの近距離をワープを使い帰ってきた。
「宿はここからだと遠いから、あの人の家に泊めてくれるってさ!」
「えぇ!?本当ですか!?」
「嘘つく必要ないでしょ、ほらさっさと行くよ!」
休めると知った途端元気を取り戻したベネジクトを筆頭に、泊めてくれる老父の自宅へと向かった。


「何ここ広い」
「婆さんと2人だと余計に広く感じるんじゃよ。あんたらが来てくれて嬉しいのう」
「いえいえ、こちらこそありがとうございます」
学校の敷地程の広さだろうか。
とにかくとてつもなく広かった。
「ここは本当に家か?公共の施設などではないのか?」
「……迷路」
「迷わんように気ぃつけんしゃいね」
しばらく廊下を進み、部屋に案内される。
客間らしいそこに、レストを除く3人は正座した。
「なんか居るだけで緊張するわここ」
「同感だ……落ち着かん」
小声で話す2人をよそに、真騎はこの旅の目的である質問を投げかける。
「少し尋ねたいのですが、幻石の守り人というのをご存知ですか?」
「おぉ、知っとるぞ。なんせよぅ遊びに来んしゃる」
手がかりが1つ、増えるかもしれない。