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幻石〜5つの石を探す旅〜

素人の一次創作、幻石のサイトです。

幻石〜5つの石を探す旅〜 第7話

「少し尋ねたいのですが、幻石の守り人というのをご存知ですか?」
「おぉ、知っとるぞ。なんせよぅ遊びに来んしゃる」
手がかりが1つ、増えるかもしれない。


第7話「白」


「ほんとに?嘘じゃないの?」
「当たり前じゃ、本人がそう言っておったしな」
「どんな方なのですか?」
真騎が問う。
これでベネジクトが言っていた情報と一致すれば、その人である可能性は高くなる。
「豪快な方じゃ。髪は短くて、色は浅葱色。女性じゃよ」
「浅葱色ですか……」
ベネジクトが言っていたのは緑色、決して遠い色ではないが、明らかに違う色だ。
「ベネジクトさんが見た方とは別の人かもしれませんね」
「え!?守り人って1人じゃないの!?」
言ってませんでしたか?ときょとんとする真騎をよそに、白姫が意見を述べる。
「よく来ると言うことは、ここいらで待っておればいつか来るのではないかの?」
「早く探さなければいけませんから、それは無理です」
しかし早速論破されでしまった。
よく来るからといって、すぐに来るとは限らない。
ましてや知らない人がいるのに、守り人なんかがおちおち訪れるはずがないだろう。
「とりあえず、今日はお世話になります」
「いんやぁ、構わんよ。じゃ、部屋に案内しようかね」



「そろそろですか」
「開始しますよ」
「今日はどの辺にいんだろうな?」
約束の時刻。
アレス城通信室。
いつもの3人、シャン、サージャ、レイバーが集合していた。
前回と同様、サージャは目を瞑り手を前に出す。
「聞こえますか、光闇さん」
『わっ!……あれ、もうそんな時間でしたか』
「まっさか忘れてたのかー?」
レイバーは見えもしない真騎に対し、クスクスと笑っている。
『いろいろありまして……今日はワンルーラルまで到着しました。現在は老夫婦のお宅に泊めさせて頂いています』
「そんなに早く着くものなんですね。ワープとか使ってませんよね?」
『使っていませんよ。運良く迷子にならなかっただけです』
何故か道に迷うことなく、すんなりと進むことができたのは、あまり深く考えずに歩いていたからかもしれない。
「それで、情報は増えたか?」
『それなんですが、早速手に入ったんですよ!』
真騎の嬉しそうな表情が目に浮かぶ。
うっかり声に出してみんなに驚かれていないかが心配なところだ。
『まずはベネジクトさんから。小さい頃ワングローブに行ったときにそれらしい方を見たと。そして今お世話になっている家に、よくいらっしゃると伺いました』
「まじかよ!もう旅終わるな!」
「え?何を言っているのですかレイバー?」
シャンの笑顔が一瞬にして消えた。
その顔から浮かび上がったのは可哀想な者を見るような表情だった。
実際にレイバーの頭は可哀想なので間違った表情ではないが。
「え?もう手がかりがあって見つかりそうなんだろ?終わるじゃないですか?」
「レイバー……私の話、覚えていませんね?」
シャンはレイバーから目を逸らした。
そしてサージャも顔を伏せる。
「え!?何が違うの!?」
『それぞれの石に1人づつついてるのですから、あと4人いますよ』
「そうなの!?」
馬鹿とはまさにこのことだろう。
この仕事にたどり着けていなかったら今頃どうなっていたことか。
「私は見る目を誤ったでしょうか……」
「そうもしれませんね」
『すみません、私もそう思います』
「勘違いすんなよ!!俺はちゃんと話しは聞いてたからな!?」
「さらに駄目じゃないですか」
サージャの鋭いツッコミが入った。
話しを聞いていたのに覚えていないとなればもうどうしようもない。
それから少し雑談し、この日の報告及び通信を終えた。


翌日の朝。
お礼と別れを告げ、4人はワンルーラルの一本道を歩いていた。
周りは田んぼに囲まれていて、家も点々としか建っていない。
6の島には劣るが、都会だったワンエリアと比べるとまるで別世界だ。
「景色が変わらんのう」
その一言に対し、真騎が1つ質問をする。
「羽前さんは森にお住まいでは?」
「森でも景色は変わらぬと言いたいのか?」
「森もずっと木ばっかりじゃん」
白姫の家は"4の島森林《フォーグローブ》"に建っている。
家……というよりは神社で、もちろん鳥居も存在する。
親から受け継がれたものであり、白姫がいない今はもぬけの殻だ。
「木々には種類があろうが。木の実のなる木や紅葉する木、葉も違えば幹も違うぞ」
「でも長い間そこに居るんでしょ?飽きない?」
「お主だって産まれてからずっとあそこだろう?同じだ。飽きぬわ」
説得力があったのか、ベネジクトは納得したらしい。
それからその一本道を歩くこと約1時間。
見えてきたのはまたしても緑。
しかしそれは田んぼの緑ではなく、森林の緑。
「やっとワンフォレスト?長かったー」
ちなみにワンエリアとワンルーラルの間にあった小さな森……林と言うべきか、それはただの林で地名はついていない。
ただ整備されていないだけ、整備する必要がないだけ。
というのも、魔法学校があるためか魔物の住処が近くにあった方が何かと都合がいいのだ。
「ワンポイントまで行って見つからんかったら、その時は次の島へ移動するのか?」
「はい。守り人だって人ですから、1箇所にとどまっているとは限りませんし」
ワンポイントとはその名の通り"1の島先端"。
つまり行き止まりである。
「船とか出てたっけ?でてなかったらテレポートで戻ればいいか。また6の島行けるし」
これから長い道が続いているとも知らず、呑気な会話をしながらワンフォレストへと足を踏み入れた。



「もうそろそろかねぇ。あの子が来るのは」
「もうそんな時期なの?」
「早いねえ、予知したのは……」
「3年前くらいだったよ」
「あれ?そんなもんかい?最近じゃないか」
ワンフォレストを抜けた場所、つまりワンポイントでとある2人が会話する。
片方は女性、もう片方は男性。
静かなその空間で、2人の声だけが響いていた。
「面白そうだから、ちょっといじってこようかねぇ。あんたも行くかい?」
「いや、ここで待ってる」
「そうかい。こっそり追ってきていきなり抱きついたりするんじゃないよー」
女性はどこからか取り出した扇子をひらひらさせながら、森の方へと消えていった。



一方その頃の白姫一行。
「はい、迷子のパターン入りましたー」
「完全に迷いましたね……」
この世界に詳しい地図は存在しない。
理由としては狭いから、分かれ道がないからなどが挙げられる。
分かれ道がない、というのは、6の島からそれぞれの"先端《ポイント》"まで一本道が続いているという意味だ。
ただし、真ん中に一本道が敷かれているだけであり、その道をそれたら道はない。
しかし最近は整備されてきており、特に"都心部《エリア》"周辺は分かれ道がすくなくない。
逆に言えば一本道さえ見つけることができたなら、迷うことはないということだ。
「これだから森林は……なんでこんなとこ歩いてるわけ?」
「仕方なかろう。守り人を探しながら行かねばならんのだからな」
まるで小さな落し物を探すように、慎重に歩いていく。
そんなとき、少し遠くに子供の姿が見えた。
向こうから近づいてきている。
「子供ですか……遊びにでもきているのでしょうか?」
「我には同じ迷子にしか見えぬのだが」
その子供は――青の着物を着た浅葱色の短い髪をした少女だ。背はレストより少し高い――こちらに来るなり白姫の目の前に立ち、口を開いた。
「お姉ちゃん、私のこと覚えてる?」
「は?我か?」
白姫はその言葉に目を丸くした。
考える間もなく、それに続ける。
「我の記憶にお主の事など1ミリも残っておらんぞ」
「でも私の記憶にお姉ちゃんの事は残ってるよ?」
「訳のわからぬことを言いおってからに、我は覚えておらぬのだ。それと我はおなごではないぞ、おのこでもないがな」
そんなやりとりをしている最中、真騎とベネジクトは他のことを話していた。
「浅葱色……あの子でしょうか?」
「あんな子供が?」
「可能性は0ではありません」
真騎はレストを背中から下ろして、少女の前に立った。
そして腰を下げ、少女に話しかける。
「迷子ですか?」
「いや……う、うん。迷子なの。遊んでたら、一本道見失っちゃった」
「1つ、聞いてもいいですか?」
少女は頷いた。
それを見て、なんの捻りもなく単刀直入に尋ねる。
「あなたは幻石の守り人ですか?」
頭で質問の意味をまとめていたのか、少し間を開けて答えた。
「幻石の守り人?知らないよ」
「そうですか。すみません、変な事を聞きましたね」
「別にいいよー!」
少女は笑顔で返答した。
子供らしい、純粋な笑顔だ。
「名前は?うちはベネジクト!」
「時節 詩貴(じせつ しき)!みんなからはおしきって呼ばれてるよ」
他の3人も自己紹介をする。
レストは相変わらず真騎の後ろに隠れている。
「お家まで一緒いこっ!うちもここ早く抜けたいし」
「ほんと!?ありがとう!お家はね……あっちかな?」
詩貴の指差す方へ歩いていく。
しかし森は深くなるばかりで、一向に一本道は見えなかった。
それでも歩いていたその時、白姫が歩みを止めた。
いや、正確には止められた。
「な、なんだ!?動かんぞ!?」
「何してんのあんた?何もないじゃん。金縛り?」
ベネジクトの言う通り、白姫の歩みを阻むものは何もなかった。
「いや、何かに捕まっている感触はあるのだが……」
よく見ると白姫の服や髪は風が吹いても静止している部分があった。
すると、白姫は異空間から武器である刀を取り出す。
この世界では異空間に物をしまうことは当たり前である。
白姫が手ぶらなのはバッグ代わりである異空間に全てしまっているからだ。
もちろん、全員が扱えるわけではない。
「感触があるなら斬ってしまえば良い」
自身のお腹の前に刀を通す。
しかし見えない何かが動くことはなかった。
そんな時、少女が一変し、言葉と共にジャンプした。
「この阿呆白道!!ちゃんと周り見な!!」
次の瞬間、見えない何かに飛び蹴りを喰らわせていた。
そして動けるようになった白姫は、一歩手間に下がる。
「え!?あ、ほんとだ!隠れたままだった」
「だから抱きつくなっていったろうが!!」
蹴り飛ばした方から、白道と呼ばれた男性の声が聞こえる。
そして徐々に透明になっていた姿が露になっていく。
そこには半泣き状態の真っ白な人間が尻餅をついていた。
そして少女の方も、30代後半の容姿へと変化していた。
ツヤのある翠色の長い髪を緩く1つに束ね、時計の形をしたピアスをつけている。
「ごめんね、でも本当に嬉しいんだ」
半ば混乱状態のみんなを差し置いて、白道が話す。
顔には獣の爪につけられたような痣が目立つ。
そして白道は涙を溢れさせながら続けた。
「会いたかったよ、白姫」
白姫と白道の間に、少しだけ風が吹いた。