幻石〜5つの石を探す旅〜

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幻石〜5つの石を探す旅〜 第13話

昼過ぎ、約束の時間。

ベネジクト、白姫、そしてレストの順に、待ち合わせの場所に指定された大きな木の下に集まっていた。

残るは真騎なのだが……。

「昼過ぎってだいぶ大雑把よねー……真騎、何かあったのかな?」

「彼奴にしてはちと遅いのう。我ですら来ておると言うのに」

という話しをしていると、遠くから黄色い人影が見えた。

真っ黄色な人物などそうそういないだろう。

「私が最後ですか。すみません……少し長引いてしまいまして」

 「いいよ、そんなに待ってないし。で、うちらなんにも見つけらんなかったんだけど、真騎はなんかあった?」

「申し訳ありません。成果無しです……」

しゅんとする真騎。

あの後掃除をしながら本を見ていたが、それらしい書物は見つからなかったようだ。

「普通に見つかる方がおかしかろう。また別の方法で探せばよい」

 「そうですね。ここには無いということで、2の島田舎《ツールーラル》に進みましょうか」

 

 

第13話「電波が届きません」

 

 

1の島の時よりも道は短いのだが、ここでまたハプニング。

「ねえちょっと」

「どういうことだこれは」

「たくさんいますね……」

今回は目の前ではなく背後。

殺気や敵対心こそ無いものの、数十匹の魔物がぞろぞろと付いてきているのだ。

これらはみんなレストの召喚獣

「かわいいのもいるけどさ、あんのごっついのはどうにかならないわけ?怖いんだけど……」

 「みんないい子だから……大丈夫」

今現在レストは、付いてきている魔物のうちの1匹に座っている。

鳥のようだが、背中は平で、翼は縦に長い。

まるでベッドのような魔物である。

種族名はベッドードーだ。

そしてこの魔物はなんと……

「ワタシタチ魔物ハ、ムヤミニ攻撃スル事ハアリマセンデスヨ。警戒心ノ強イ奴ヤ、暴走シテイル奴ハ別デスガ」

話すことが出来るのだ。

「あんたもよ!なんで喋るわけ!?意味わっかんないでしょ!?」

「努力シマシタ!」

「努力でどうにかなるものなのか?ちと不気味だのう」

「……ドドは頭が良いだけ」

「城のみんなにも見せてあげたいです」

 いくら魔物とは言え、人の言葉を話せるのは珍しい。

珍しいというのも、他に何件かそういう例が上がってきているからだ。

魔法が使える分普通の動物より知能が発達しているのだと、最近発表された。

「他の魔物は話せないの?」

「ハイ。レストヲ通ジテ話セマスカラ、困ル事ハアリマセンデス」

 「魔物の言葉がわかるってのも大変なのね」

 

 

 

案内されながらしばらく歩くと、1の島田舎《ワンルーラル》よりも少し賑やかな、2の島田舎《ツールーラル》が見えてきた。

人々は、魔物を大勢連れていても驚く事は無かった。

その中から1人、小柄な男性がこちらに駆け寄って来る。

「帰ってきたかレスト!全くお前は、城に行った後連絡も寄越さんで何をしておったんだ……それで、そちらの方々は?」

「一緒に旅する人達……」

「んん?旅?最初っから説明してくれんか」

「あ、あの……良ければ私から説明致しましょうか?」

「そうしてくれると助かる。なんせこいつぁ言葉が少ないからな。おっと、申し遅れた。俺はこいつ、レストの父親。ルボワってんだ」

「私は光闇 真騎と申します」

 「うちはベネジクト」

「羽前 白姫だ」

自己紹介をし終えると、立ち話はなんだからと、家に案内された。

 

 

「王女様直々に〜!?たまげたなー!レストにそんな大事な役目が回ってくるなんてなあ」

かなり驚いたようで、机に身を乗り出していた。

元々リアクションが大きいのも相まって、とても大袈裟にも見える。

「きっと彼にしかない特別な力があったからではないですか?あれは素晴らしい能力ですよ」

「ははっ!そうだろう?自慢の息子さ!あいつにはいつか世界中を見せてやりたかったからな。いい機会だ」

「安全面は私にお任せください。必ず無事にお帰し致します」

言葉と共に、座ったまま一礼。

「頼もしいね〜!頼んだよ、他の2人もな」

「頼まれるのは良いんだけどさ、うちらは警戒されててろくに話せもしないんだよね。どうすれば話せる?」

女子のベネジクトと、性別は無いが女性に見える白姫。

返事や必要な事は話すが、自分から近寄ってきたことは未だに無い。

それどころか完全に避けられている。

 「すまんなあ。半年前くらいに、女房が仕事とだけ告げて家を開けておってな。それ以来女は年齢問わず皆信用出来なくなっとるんだ」

たまに話していた近所の女の子、かわいがってくれていた近所のお婆ちゃんなどなど。

よくすれ違うのにすっかり疎遠になっていた。

 話すのは魔物とばかり。

「愛想をつかされたのではないか?」

「かもしれんなあ。否定はしきれん」

苦笑い。

そうするしか、今のルボワには逃げ道が無かった。

 「元々そんなに話す奴じゃ無かったんでなあ。きっと時間が解決してくれるさ」

「そんなむちゃくちゃな」

「丸投げしおったな……」

無理やり逃げ道を確保するルボワ。

苦笑いが大笑いに変わっている。

「話しは変わるのですが、ルボワさんは幻石の守り人というのはご存知でしょうか?」

「幻石の守り人?知らんなあ。第一幻石なんて存在するのかもわからんのに」

「そうですか……」と、今度は真騎が苦笑い。

対するルボワは、何かを思い出したように口を動かした。

「だが、昔っから幻石の仕業なんじゃねえかって話しがあんのよお。ここぁ空間を司る幻石があるって言い伝えだろ?」

 2の島は空間の幻石があると伝わっている場所。

地球と繋がっていた不安定な空間を守るためではないかと考察されている。

そしてその影響なのか、2の島出身の者は空間能力に長けている事が多い。

「ここよりも奥、森林を越えた2の島先端《ツーポイント》にはたどり着けねえんだ」

「行けないって事ですか?」

「おうよ。俺もダチと行ったことがあるんだが、進んでも進んでも同じ道。まるで入ってくんなって言われてるみてえでよぉ。帰りはそんなこと無かったけどな」

 ただでさえ他の島よりも空間が不安定な場所だ。

制御できていなくても不思議ではない。

しかしもし幻石の仕業なら……?

「それと……」

「まだ何かあるのか?よく知っておるのう」

 「はははっ!今言おうとしたやつの方が、いろいろ知ってるぞ。素性はわからんが、ここいらでヒーローというのをやっておる。いわゆる雑用係だな。名前は乙人(おつと)。見たらすぐわかるさ。うるさい奴だからな」

「その方に聞いたら何かわかるかもしれませんね……ありがとうございます、ルボワさん」

「お安い御用だ!息子も世話になってるしな」

その世話になっている息子、レストは今ぐっすり寝ている。

数日ぶりの実家だからなのか、いつもより深い眠りについていた。

隣には常に小さい魔物が沢山。

「今日はもう遅いから、止まっていくといい。レストもすっかり眠っちまってるしな」

「いいの!?やったー!野宿回避ー!ありがとうおじさん!」

「毎度毎度運が良いのう」

「すみません、お世話になります」

「その代わり、付き合ってくれよ?」

その日の夜、深夜まで晩酌を続けた為に、城との通信ができなかったとかなんとか……。

 

 

「真騎ー大丈夫ー?」

「大丈夫じゃないです……」

「2人して飲み過ぎなのだ。加減を考えんか」

「返す言葉もねえや」

翌朝。

椅子に座ったまま寝ていた真騎とルボワの元に、白姫とベネジクトがやって来ていた。

いつもは起こされる側のベネジクトが、今日は逆の立場である。

「真騎ってお酒飲めるのね。なんか意外かも」

「ふふっ、よく言われます」

「記憶が曖昧だが、兄ちゃんあんまり酔ってなかったな」

「そんなこと無いですよ。夜の記憶全くありませんからね」

「全くないの!?」

全く無いらしい。

本当に綺麗さっぱり忘れているようで、飲む前に退出した白姫とベネジクトの記憶さえ無かった。

「さて。だいぶ楽になりましたし、ルボワさんを1人にするのは心配ですがそろそろ出ましょうか」

「えっ休まなくていいの!?」

「はい。自分の身体なら光魔法で治せるんです。医者ではないので他人は治せませんが」

さすが隊長……と言ったところか。

しかし普通ならば、こう言った病などは自分の魔法で治すことはできない。

医者に魔法をかけてもらうか、時間が解決するまで待つしかないのだ。

「不思議な奴だのう。貴様本当に人間か?」

「ふふっもちろん人間ですよ」

「魔法は解明されてない部分も多いし、ありえない話しじゃ無いでしょ」

「そういう事です。ではルボワさん、昨晩はありがとうございました。お水と食べ物を置いておきましたので、召し上がってください。失礼致します」

「……バイバイ」

「こっちこそありがとうな。レストをよろしくたのむぁ!レストも迷惑かけんなよー!」

深々と礼をして、4人はその場を去った。

 

 

次の目的は、いろいろ知っているという乙人に会うこと。

特定の場所に現れる訳では無いため、これまた探さねばならない。

ただし今回は有名人なので、探すのは簡単であった。

バラけることなく4人で聞き込みをしていると、「その子ならさっき向こうで子供達と遊んでいた」という嬉しい答えが返ってきた。

指差した方へ向かうと、聞いた通り子供が集まっていた。

そしてこのベネジクトの一言。

「なにあの仮面……ダッサ」

 金髪の髪を右耳辺りで1つにまとめ、左に垂らした前髪は長く、亜麻色のワンピースに黒のズボン。

 おまけに青い飾りの着いたネックレスに、顔面にはパーティでよく見るあの仮面。

ヒーローとは程遠い容姿だが、子供に好かれている為悪い人では無さそうだ。

「あの、乙人さん……ですか?」

「はっ!何奴!?さては悪の組織の者か!?」

「えっ」

「んなわけないでしょ」

「うるさい奴というのは真だったな」

華麗に茶番を止められ、頬を膨らました。

「ちょっとくらいノってくれたっていいだろー!?そうだ、俺様が乙人!悪い奴らは俺に任せな!」