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幻石〜5つの石を探す旅〜

素人の一次創作、幻石のサイトです。

幻石〜5つの石を探す旅〜 第15話

「王女様がねえ。やーっと探し当てたのな、俺らの存在」

あれから数十分。

なんとか説明して理解して貰う事が出来た。

最後は詩貴が何か言っていたようだが……。

「やっと、とは?」

「んん?そろそろバレても良いんじゃねえかなって思っただけだ。幻石の在り処もな」

長年に渡り伝説としてしか語り継がれなかった幻石。

それがつい最近シャンによって確定された。

幻石は存在して、さらには守り人までいること。

守り人が幻石その物であることは特定できなかったが、それだけでも凄いことだ。

「王女様は本で見てたって、真騎言ってたよね?」

「はい。珍しく図書室に篭っていましたね」

「じゃあその本書いたの、誰?」

 

 

第15話「幻石流昼ごはん」

 

 

 「それなら、2人程心当たりがあるねえ。あたしらの事を知っていて、かつ文才のある者」

「あなた方を知っている者が、白道さん以外にもいらっしゃるのですか?」

「ああ、居るさ」

詩貴は近くの岩に腰掛け、扇子を取り出しながら続けた。

「1人は知識の幻石。もう1人は……あんたの母親さ。あんただよ、白姫」

「母上が……?」

「お前んちにも何冊か有るんじゃねえのか?暇があれば書いてたし」

「妄想を綴ったような書物ばかりだったがな」

白道の妻であり白姫の母親である咲姫(さき)は、異世界から来た人間である。

まだそれ程人間が繁栄していなかった頃。

妖力の強かった咲姫はここへと迷い込んだ。

その後白道と恋に落ち、白姫を授かり、一生を終えている。

 「しかしそれならば、何故城にあるのでしょう?」

「誰かが盗んだんじゃないの?」 

「それは有り得ぬ。あの辺に人など来んからな」

深い森の中に佇む家。

1人で住むにはあまりにも広いそこは、ただただ違和感を放っているばかりだ。

たまに小さな魔物が覗きに来るくらいで、人はおろか妖怪すら見当たらない。

時には家ごと見えなくしてしまったこともあるという。

 「書いたやつが誰だろうが、それを信じた王女様は素直だな。この世の中嘘だらけだってのによお」

 「シャン様は鋭いお方ですから、何か感じ取ったのかもしれませんね」

あれでもこの世の王女。

英才教育を受けて育ち……と言いたいところだが、王の方針によりのびのびと育っている。

そのせいかおかげか、知識は少ないが、王女にふさわしい成長を遂げた。

 「その書物はともかく、はよう次に向かわねばならぬのではないのか」

「そうですね。知識の幻石に会えば真相もわかるでしょうし。行きましょう、3の島へ」

「その前にご飯食べようよー!歩きっぱなしで疲れたー!!」

「あっはっは!今日も元気だねえ。あたしがご飯作ったげるよ。乙人、あんたは手伝いな」

 「えー!?なんで俺が!!」

 

 

「どんなゲテモノが来るかと思ったら普通に美味しそうなの来た……」

「なんて想像してんだい。人が食べる物は把握済みさ」

「やっぱり妖怪は人とか虫とか食べるの?」

「食わぬわ。阿呆めが」

出てきた物は、野菜たっぷりのスープとパン、そしてデザートの果物。

振る舞うと言っただけあり、料理の手際は良く見栄えも綺麗だ。

さらには母親が作ったような愛情も目に見えて注がれている。

そう、目に見えて。

「……人参がハート」

「可愛いだろう?」

子供が野菜嫌いなのはここでも変わらない。

小さい子供が楽しんで食べられるように、この世界の母親も日々工夫しているのだ。

白道が大の野菜嫌いでねえ、よくこうしたもんさ。……今もだがねえ」

中身どころか舌も子供なようだ。

「やっぱうめえなー!姐さんの手料理!」

「あんたはいつも美味しそうに食べるねえ。作りがいがあるってもんだ」

乙人が手伝ったのは材料調達。

料理には一切触れてはいない。

あらゆる空間を繋げて、食材や調理器具などを集めていた。

「ご馳走して頂きありがとうございます。お返しできたらいいのですが、料理はできないものでして……」

「構いやしないさ。好きでやってんだからね」

その後残飯が出ることは無く、綺麗に平らげたのは言うまでもない。

 

 

「美味しかったー!また食べたい!」

「久方ぶりだのう、手料理を昼に振る舞われるのは」

 後片付けも終わり、またもやのんびりタイムに入っているところだ。

今は昼の1時半頃。

休むにはまだ早い。

「休憩も終わりましたし、さっそく3の島へ向かいましょうか」

すると何か閃いたようで、ベネジクトが指を鳴らして立ち上がった。

「そうだ!乙人に連れてって貰えばいいんじゃん!知識の幻石のところに!」

その提案に、皆が賛成した。

しかし当の本人はと言うと……。

「あー悪い、できねえんだわ。俺様はあくまでも空間の移動だからな。特定の人のとこにゃ行けねんだ」

「は!?無能!役立たず!ポンコツ!!」

心が折れる音がした」

空間と空間を繋いで移動しているだけなので、特定の人物に1発で会えるような便利な能力ではない。

その足で探さなければならないところは、他の生物となんら変わりはないのである。

「つまり何処にいるかわからないって事ですか?」

「最近はあんまり連絡取れてないからねえ。それに居場所まで毎回言い合いなんてしてないさ。変な奴にバレでもしたら面倒だからね」

「今から連絡取れたりしないの?」

その言葉を聞いて、乙人と詩貴は互いに顔を合わせる。

しばらくして目線を逸らすと、2人の口から出たのは「無理」と言う一言だった。

「なんだ今の間は……」

「俺らにもいろいろあんだよ。残念ながらこのメンツじゃあ無理だ。悪ぃな」

「じゃあせめて3の島まで連れてってよ」

「それなら構わ」

「……船乗らないの?」

乙人を遮って放たれた声の方には、純粋な目をしたレストが立っていた。

表情こそ変えないものの、悲しい感情がひしひしと伝わってくる。

「船、乗りたいんですか?」

こくっと静かに頷き返事する。

1の島からこちらに来る時には、あいにく時間に間に合わず船に乗れていない。

本当はその時も乗りたかったのかもしれないが、感情をあまり表に出さないレストに誰も気づかなかったのだ。

「じゃあ船で行こう。こんな目でお願いされちゃあ断れないでしょ」

「だが船は通っておるのか?港には行けぬのではないのか?」

「港に通じる道はちゃんと通れるぜ。奴ら賢いから別の道作ってやがんだ。どの道からもここには来れねえがな」

白姫達が乙人を追って来た道とは別の道から、港には向かう事が出来る。

ここだけ港が無ければ他の島にも影響が出てしまうからだ。

道案内の看板も建てられていたのだが、急いで来たため確認しそびれていたようだ。

「そうと決まればさっそく行こ!また乗り遅れてもやだし」

「じゃ、せいぜい頑張れよな」

もうすぐ最大まで日が昇る午後2時。

石に戻った乙人と詩貴を鞄に入れ、4人は港へと歩き出した。

 

 

「乙人に移動頼めば良かった!無駄に歩いたー!!」

「腹ごなしには丁度良かろう」

来た道を迷うことなく戻り、港行きの看板が指す方へ進むこと約一時間。

ようやく港へとたどり着いた。

大きな船から小さな舟まで、数は少なかれど活気に満ち溢れている。

「次の3の島行きの船はいつ出航しますか?」

「3の島行きですか?今は運航してないんですよ。すみません」

「はぁ?運航してないってどういうことよ?」

「向こうの港が封鎖されてしまっているんです」

「封鎖?どうしてですか?」

「それが分からないんです。行っても追い返されてしまって……」

港が封鎖されれば、物資が届けられなくなり商売が滞る。

更には交通手段までもを失い、生活にさえ支障をきたすだろう。

「……船乗れないの?」

「あの、どうしても船に乗りたいのなら、個人で運航している方をご紹介しますよ。行けないのはあくまでも、商業用やたくさんの人を運ぶ大型の船なので」

 「本当ですか!?ありがとうございます!」

自分は今離れられないからと、名前と所在を書かれた紙切れを渡された。

ここから少しだけ離れた小屋に、その人物は居るようだ。

「さっさと行かなきゃ!日が暮れちゃう」

 

 

ところ変わって古風な家の建ち並ぶ住宅街。

一つの駕籠(かご)を引き連れ、数十の人が歩いていた。

否、数十の人に囲まれていた。

「こんな所まで……村民に被害を与える訳にはいきません!どうか食い止めてください!」

駕籠の中から指示を出す1人の影。

隙間から覗く桃色の目からは、焦りが見て取れた。

「しかしこの数では対抗すら……!」

「……私が援護します。出してください」

「な!それはいけません!貴方様はそこにいて頂かなければ……」

「この窮地の中黙って見ているなんて出来ません!」

「分かりました……」

駕籠が降ろされ、中から青年が出てくる。

手には武器である弓矢。

敵はもうそこまで迫ってきていた。

「青梅(おうめ)、最優先するものは?」

「……村民です」

「分かっているなら大丈夫ですね」

ゼロ距離から放たれた矢は、緑色に光っていた。

魔法が込められているようだ。

「少しばかり寝ていてくださいね」

その後も攻防が続き、敵が半分程減った頃。

飛んでいく矢の数も少しずつ減っていた。

たった十分程度の間で、青年の額には汗が浮かび、息も上がり、目も虚ろになっている。

とうとう地面に膝を付いた青年の元に、青梅と呼ばれた女性が駆け寄る。

「桜樹(おうじゅ)様!!」

「村民を優先しろと……っ……」

「私には桜樹様を見捨てるなんて出来ません!翠閃(すいせん)!いるんでしょ!」

「はいはい。運べってんだろ」

何処からか現れた翠閃は、夜桜を背に乗せ敵を惑わすように一瞬で抜き去っていった。

もちろん追ってくる者も居たが、速すぎて追いつけなかったようだ。

「お前らはこの私!桜樹様一番の従者、国守(くにもり) 青梅が相手してやる!桜樹様は眠らせてたけど、あの方が居ない今は……全てが紅く染まると思え」

眠っていた敵の心臓に刀を突き刺しながら、言い放った言葉を証明した。