幻石〜5つの石を探す旅〜

素人の一次創作、幻石のサイトです。

幻石〜5つの石を探す旅〜 第16話

「なんで探すのに30分もかかるの!!すぐそこじゃん!!」

見事にフラグを回収し、船の持ち主を探すのに3倍の時間を費やした4人。

歩いて10分もかからない目的地を目指して、周りをぐるぐるとしていたのだ。

「お主が途中から反対方向を目指したからであろう。地図も読めぬのか」

「あんただって反対しなかったじゃん!うちのせいじゃない!」

「問い正したのに地図も見せず先に進んだ貴様に責任があると思うがな!」

 「いいじゃないですか、見つかったんですから。終わりよければ全てよしですよ」

はいと言わせんばかりの笑みで二人を宥める真騎。

聖母とまで謳われた笑みである。

「お主の笑顔、時々恐怖を感じるのだが……気のせいかのう」

「うちも同意見」

「ふふ、私はただ笑っているだけですよ。早く行きましょうね」

 

 

第16話「悪いお知らせ」

 

 

見事舟を出してもらえる事になった白姫一行。

簡単に事情を説明し、急いで準備を進めていた。

と言いたいのだが……。

「ごめんなあ。もうすぐ日が暮れるから出せないんだよ、舟」

「はあああ!?なんでよ!夜でも舟くらい出せるでしょ!」

「あたしの舟にゃライトが無いのよ。夜には出さないかんね!ははは!でも乗り心地は保証するからさ、また明日訪ねてくんね?」

半ば強引に追い出され、手持ちぶたさになってしまった4人。

今夜は野宿するしか無さそうだ。

「えーまた野宿ー!?泊めてくれたっていいのにー!!」

「甘えっぱなしになるわけにもいきませんし、今日は一旦引きましょう」

 『だったら戻ろうぜー。2の島先端《ツーポイント》によぉ』

一瞬の静寂の後、ベネジクトが口を開いた。

「え!?あんた喋れんの!?」

『おう?ったりめーよ』

石の状態でも会話は出来るらしく、乙人が話しかけてきたのだ。

「先に言ってよね!無駄に歩いたじゃん!!」

『運動しないとデブっちまうだろうっていう俺様の心優しい配慮だろ』

「は?」

『大変お美しいお身体でございますね』

「いい加減にしないと叩き割るぞ」

『褒めたのに!褒めたのに!!』

石状態の乙人の声はエコーがかかったように聞こえ、終いには石そのものが浮いて動いている。

傍から見ると奇妙な光景だ。

幸い周りには4人以外誰もいないが、人気のある場所でうっかり話してしまった時には白い目で見られるだろう。

それどころか動いて話している石を見られたら通報されるかもしれない。

もちろんアレス城にである。

「いいから早く移動させんか」

『俺は都合の良い道具じゃねえんだぞ!幻石様だぞ!!』

『ごちゃごちゃ言ってないで早くワープしな』

『姐さんまで……うぅ!わーったよ!ワープすりゃいいんだろー!!』

白い光が皆を包み、光が消えた時には誰の姿も見当たらなかった。

 

 

「なんでこんなにこき使われてんの……」

「ヒーローなんだろ?人の助けをするのがそれじゃないか」

「ハハハ!俺様になんでも頼りな!」

ワープしたあとまた詩貴に連れ回され、夕食の材料集めをしていたのだ。

今は夕食も取り終え、夜に向けて備えをしているところである。

「あんた役に立つわー魔法使わなくていいし」

「ヒーローだからな!ハハハ!!」

すっかり調子に乗っている乙人。

空っぽな乙人の脳では、いいように使われているという発想がないようだ。

「馬鹿も使いようね」

「扱いやすくて助かるのう」

「あんたもあのくらい素直になればいいのに」

「それはこちらの台詞だ」

「はいはい、言い合いはそこまでです」

「あはは!愉快愉快。あんた達といると本当に飽きないねえ!」

複数人の声が交わるその空間は、今日も平和だ。

「そろそろ城との連絡を取る時間なので、席を外します。私がいない間に喧嘩しないでくださいね」

 そう言うと真騎は、森の方へと姿を消した。

「毎晩連絡取ってるけど、うちらも聞かせてくれたっていいじゃんね?」

「聞いてはならぬ事もあるのだろう。それくらい自分の頭で考えぬか」

「はあ?何?喧嘩売ってんの?」

「真実を話したまでだ」

「上等じゃん!その長い髪燃やしてやるんだから!!」

「あの坊やも大変だねえ。こればっかりは同情してやらないといけないねえ」

 

 

「ふえええん光闇隊長おおおおおお!!私じゃ無理ですぅ早く帰ってきてくださぁい!!」

『お、落ち着いてください春麗(ちゅんりー)さん……!』

いつものアレス城通信室。

今夜は少し違う面子も揃っているようだ。

「だってぇ皆さん優秀でぇ!私だけお仕事終わるの遅くてぇ!!」

『大丈夫ですから……帰ったら私がやりますし、ね?』

「それでは私が副隊長を任されている意味がまるで無いじゃないですかぁ!!」

薄紫の髪に濃い紫のチャイナ服を纏った彼女、春麗は、アレス城回復部隊副隊長。

真騎が出ている今は、実質隊長という訳だ。

「ずーっとこれなんだけどどうにかなんねえ?なあ真騎?」

『こればっかりは自分のペースで頑張ってくださいとしか……』

流石のレイバーも困っているらしい。

彼の部下からも、春麗をどうにかして欲しいとの報告が上がっているのだ。

「何か助言を貰えたらと思って春麗を連れてきたのですが……」

「効果は得られなかったようですね」

 『申し訳ないです……』

とその時。

ガチャりと扉が開き、誰かが中へ入ってきた。

「通信中失礼致しますー。春麗はん来てます?」

「あ、浅葱さん……私なんかに何か御用でしょうか?」

「ちょいと遊びに付きおうてもろう思ったんですわぁ。コメットはんも居てるで」

黒髪に水干姿のその男性は、呼ばれた通り浅葱という。

レイバーの部下、攻撃部隊副隊長だ。

コメットは情報部隊副隊長である。

「こんな夜にですか……?」

「たまにはええやろ?あのコメットはんも承諾してくれたんやで」

『いい気分転換になると思いますよ。今日はお仕事の事は忘れて、楽しんでください』

「で、ですがお仕事がまだ……!」

食い下がる春麗

彼女がどれだけ真面目なのかが良くわかる。

すると真騎がこんな事を言い出した。

 『それでは、これは私からの指令です。今日は仕事の事は忘れてお楽しみください』

「ふえええん意地悪ですよぉ光闇隊長ぉ!!」

「ほな行きましょかー。光闇はんおおきにー」

「ま、待ってください浅葱さぁん!!」 

パタン、と、ドアが閉じる。

そこに残ったのはまさに、嵐が去った後の静寂であった。

「今回ばっかりは浅葱に感謝だな」

「これで少しでも落ち着いてくだされば良いのですが……」

「そもそも浅葱さんが苦情を出したんでしょう?是非彼の手で解決していただきたいものです」

浅葱が春麗にちょっかいを出してコメットに怒られる、と言うのがいつもの決まり。

その分仲はいいため、きっとハッピーエンドを迎えることが出来るだろう。

2人が去った後は簡潔に報告を終え、通信は終了した。

 

 

「だから俺は最初っから反対してたんだ。あんな少数で逃げた上に戦闘、さらにぶっ倒れやがって」

「すみません……」
とある森の奥。
風のように走る黒の忍装束を纏った少年と、彼に背負われた弓道着に緑の袴の青年。
少年は時々後ろを振り向きながら、ぐったりした青年を連れて前へ前へと急ぐ。
微かに聞こえる人の声や金属音。
なるべくそれに見つからないように、かつ早く遠ざかれるように、休むことなく走り続けていた。

「この辺でいいか」
随分走った所で、少年は足を止めた。
止めるとともに青年を背から降ろす。
「いいか、ここでお別れだ。俺も早く戻らなきゃなんねえからな。きついだろうがこっから港まで走れ。まっすぐ行きゃあ着く。敵は居ないだろうが、念のため気配を極限まで隠す術をかける。効果は持って5分だ」
「ありがとうございます、翠閃さん。あなたもどうかお気をつけて」
「てめえよりヤワじゃねえよ。今はてめえの心配しろってんだ」
「あはは……ごもっともですね」
「……死ぬなよ」
それだけ言い残して、少年は道を引き返して行った。

 

 

「着いたー!3の島上陸ー!」

翌日、約束通り舟を出してもらい、無事に到着した4人。

港が閉まっているだけあり、人もほとんど居ない。

「ありがとうございます。とても助かりました」

「いいっていいって!あたしも久しぶりに舟乗りたかったしさー!」

「何故お主らはそんなに元気なのだ……」

「船酔いくらいちょっと休んだら治るさ!あははっ!!」

ぐったりしている白姫。

今まで森で生きてきたため、舟どころか海も初めてである。

乗り物にも慣れていない白姫には酷な旅だったようだ。

「しばらく休憩してから行きましょうか。レストくんも海を見ていたいようですし」 

普段真騎の背中で寝ているレストは、珍しく起きてじっと海を見つめていた。

太陽に照らされてキラキラと光るエメラルドグリーンの海に、これまたキラキラ光る深緑色の目をさらに輝かせて嬉しそうにしている。

「へぇー!可愛いとこあんじゃん」

「では木陰にて休ませてもらう……舟にはもう絶対に乗らぬからな……」

ふらふらと木陰に向かい、一本の木にもたれ掛かろうとしたその時。

低木がガサガサと揺れ動き、奥から1人の青年が倒れ出てきた。

走って来たようで、息を整える間もなく青年は話し出した。

「旅の……方たちですか……?お願いします……!村を……みんなを……夜桜様を!助けてください!!」

「ど、どうなされたんです!?」

「助けてください……!夜桜様が!みんなが!!うぐっ……」

ボロボロの青年は必死に言葉を紡いでいく。

出血、吐血により、白だったであろう服は所々赤に染まっていた。

「横になってください、今治療しますから」

「い……さが……ごほっ!」

「ゆっくり話してください。大丈夫、ちゃんと聞いていますよ」

「はぁ、はぁ……戦がっ……行われているんです……!」

紡ぎ終えた言葉を聞いた時、そこに居合わせた全員に衝撃が走った。