幻石〜5つの石を探す旅〜

素人の一次創作、幻石のサイトです。

18話 あとがき

1、2、3話に次ぐ更新の早さですね。

あの頃何があってこんなに早く書き終えてたんだ?

前回のあとがきで戦闘シーンくるよ!って言ったのに来ませんでしたね。おかしいなあ(目逸らし)

今回も新キャラが登場しましたので、一覧記事更新しておきました。

 

 

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今回登場した水無月くん。

最初は10歳のショタといううちの子によくいるパターンのかわいい子でした。

良い意味で素直、純粋、そんな子。

どうしてこうなった。

きっと父様にいろいろ言われてねじ曲がってしまったんでしょう。

そのおかげか強い。

村の一番偉い人の側近である青梅をも凌ぐ見せ場が出来てしまった。闇が深い…

敵になってしまった以上仕方ないですね!

幻石〜5つの石を探す旅〜 第18話

「貴様、餓鬼のくせにこんなところで何をしている?さっさと帰ってママと一緒に昼寝でもしてな!」
「負け犬の遠吠えだね。既にボロボロじゃないか。出直してくればー?そうしたところで僕には勝てないけど」

桜樹を逃がした後、数人で数十の相手をし続けていた。
だいぶ数は減っているが、敵部隊の中心である少年には未だに傷を負わせられていない。
こちらは刀なのに対し、相手は遠距離からお札を使い爆発を仕掛けてくる為に近づけないのだ。
そして今青梅がいるのは、薄い青緑の髪色をしたその少年の近く。
少年という形容が相応しい程幼く、戦場には似つかわしい風貌をしている。
その反面ませているようで、口が達者だ。
「お喋りが過ぎるぞクソガキィ!!」

勢いのまま少年へ突っ込む。
「ちょっと!危ないじゃないか!それに僕は餓鬼でもクソガキでもないよ。水無月ってちゃんと名前があるんだから!」
水無月……!?」

 

 

第18話「暗闇」

 

 

「お前暦(こよみ)の連中か!!」
「なんだ知ってたの?そりゃあそうだよね!あんたらが僕らを追い出したんだから!」
「あれは自業自得だろ!……まさかお前らが戦をけしかけたんじゃないだろうな!!」
「心外だなあ。もちろん恨みはあるけど、僕ら次世代にはあんまり関係ないからね。上の人なら何か知ってるかもしれないけど」
暦とは、呪術を扱う一族のこと。
その昔善からぬ呪術を振りまき、ひと騒動起こしたために村から追い出されたのだ。
もちろん村の記憶を全て消されて。
また、一族の中でも特別強い者には、12月の名をどれか1つ貰える。
つまり水無月、6月の名を持った少年は普通の少年ではない。
「そうだ、君はあいつらの仲間でしょ?僕が殺れば父様に褒めてもらえるかも!僕の為に殺られてね」
汚れのない純粋な笑顔は、彼の歪んだ性格を表しているようだ。
「戯言を!」
青梅は1本の刀を構え、水無月の方へ走る。
対する水無月はお札を構え、何かを唱え始めた。
「それはどっちの台詞かなあ!」
お札を空へ投げた時にはもう、呪術が発動していた。
青梅の体が、まるで時が止まったかのように静止する。

と同時に、固く握りしめていた刀が音を立てて地面に落ちた。
「動けない……っ!」
「爆発ばかりじゃ芸がないからね」
呪術とは、一般的に呪いと呼ばれる類いの物がほとんどだ。
利益があるものはおまじないと呼ばれるが、呪術は闇魔法の一種であるため扱うことは難しい。

お札という魔法道具を使い、発動する。
「おにーさんの闇を一緒に覗き見ようじゃないか。いや、おねーさんかな」
「やめ、ろ……!」
「やーだねっと」
先程とは別のお札を取り出し、動けない青梅の額へ貼り付けた。

そしてまた呪文を唱える。
「奥底に眠る黒き獣よ、我が元へ集い給え!」
「何をし……うわああああ!!!!」
青梅を黒いオーラが纏い、その場に膝をついた。
先にかけた金縛りは解けているが、体を動かすことは困難だ。
「おねーさんの闇は楽しませてくれるかな」

 


森の中を駆け抜ける保護色の少年が1人。
その姿はまるで風のようだ。
「あ!翠閃!おつかれー」
「はぁ、はぁ、おつかれーじゃねえんだよ……」
「珍しいわね、あんたの息切れ」
「うるせえ、っここまで、はぁ、飛ばしてきたんだ……早くしろ」
はいはい、と言いながら、金髪の少女は手を光らせる。
「深光術、光芒一閃(こうぼういっせん)」
その手を翠閃の背中に当て、翠閃もまたそれを受け入れた。
回復術だ。
「ずいぶんと消耗してるわね」
「全員と連絡取ったんだぞ……お前一気に全員回復してみろ」
「何?殺す気?」
「そういうこった」
木陰に隠れながら翠閃の回復を続ける。
戦闘した訳では無いため、大きな傷はない。
しかしそれ以上に気力と体力が消耗されており、回復するには時間がかかりそうだ。
「青梅さん達はどう?傷が多いならあたしが行ったほうがいいわよね」
「いや、お前はここにいた方がいい」
「は?怪我してないってこと?」
「武器的に不利ってだけで、あいつらにとっちゃあ大した相手じゃない」
「ふーん。ずいぶん青梅さん達を過大評価するのね」

「餓鬼1人如きに戦力は割けねえって言ってんだよ」

「素直じゃないの」

他愛ない、戦時ならではのやり取りを繰り返す。
しかし青梅と水無月の戦力差はその通りである。
歳の差もあるが、水無月の性格がそうさせているのだ。
「殺るのは時間の問題……おい、あいつら向こうに送り込んだのか?」
「ん?あの2人?知らないわよ。姉様に聞いてよね」
少しずつ回復してきた翠閃が何かを感知したようだ。
以前ベネジクトが使っていた、一定の範囲に居る者をサーチする草魔法とよく似たもの。
修行を積んだ翠閃は、知っている者なら術を発動せずとも感じる事ができる。
一定の魔力を常に張り巡らせているからだ。
「通信するからちょっと黙ってろよ」
「ちょっとまた術使う気!?回復する身にもなってよね!!」
「黙ってろって言ったろ」
少女の反論も虚しく、翠閃は指を組む。
「深草術、一木一草(いちぼくいっそう)」
百花繚乱とは違い、個人に向けて意識を飛ばす。
通信の先は――
『どうした』
「あいつらをお前が向かわせたのかと思ってな。何か指示したか?蒼泉」
少女が姉様と呼ぶのは、戦場の指揮を執っている蒼泉。
しかし実の姉妹ではなく、従姉妹にあたる。
『私は何も言っていないが、まさか向かったのか?あいつらではとても敵わんだろう。呼び戻せ!』
「言われなくてもそうしたいんだが、生憎回復中でな。行けそうもない。通信した所で止められないだろうからな」
『いつ終わる?』
「まだかかるわ。だって物凄く消耗してるんだもの」
「だそうだ」
直接触れている少女にも術の効果が得られるようで、何のためらいもなく会話に入り込んでくる。
翠閃が優秀だからかもしれないが。
『澄桃(すもも)か。お前ならその程度すぐに回復できるはずだが?』
「無茶言わないでよ!あたしだって疲れて」

『できるな?』

「はいはい分かりましたよ!やりますう!!」

 澄桃と呼ばれた少女は、手に最大限の力を込める。

それに比例するように、黄色い光も大きくなっていった。

『呼び戻せなかった場合はお前がサポートに回れ』

「はぁ!?何で俺が!」

『つべこべ言うな。それと澄桃は終わったら私の所へ来い』

「おっけー……!」

翠閃の返事も待たず、蒼泉の方から連絡を切る。
他の忍にはできないやり方だ。
「くそ、あいつら後で絞めてやる」
「ほどほどにしてあげなよね」
「おい、次はあいつらに連絡取るぞ」
「はぁーー!?もう勘弁してよーー!!」

 

 

暗い空間。
感覚の全てが奪われ、ただ頭の中をぐるぐるとさ迷うのみ。
「こ、こは……」
「君の闇の中だよ。想像してたよりずっと深そうだね。巡るのが楽しみだ!ああ、今の君には声も届かないんだったね」

ふふっ、と笑みを零す。
対する青梅は、なんの反応も示さない。
「あ!あっちに何かあるみたいだ!」
「……」
「つまんないの。仕方ない、五感を返そう」
水無月が指をパチンと鳴らすと、まるで眠りから覚めたように意識を取り戻した。
「っ!貴様何をした!?」
「さっき説明したから割愛。それよりあっちに行こ!」
「あっち?……あれは!?」
「なになにー?見られたくないやつ?だったら見るしかないよね!」
「待て!それはっ……ぅぐっ」
青梅の反抗も虚しく、水無月はそれに向かって突っ走って行った。
そして円形に浮かぶ青梅の記憶に手を伸ばし、指先から伝わせて覗き見る。
「随分と昔の記憶みたいだね。僕が産まれてないくらいかな」
真っ暗だった空間が、一瞬でその世界へと染まった。
静かで平和な時期の村だ。
スポットライトが当たっているのは、木刀を構えた少年と少女。
少年は少女へと向かうと、木刀を思いっきり振り下ろした。
しかし少女は対抗するでもなく、逃げるように木刀を避けた。
『避けたら意味無いだろ!受け止めろ!』
『わ、分かってるよぉ』
「首の桃模様を見る限りだと、この女の子はおねーさん?まるで別人だね」
「貴様に話す義理はない」
「ははっ、ごもっとも」
しばらく決闘を見ていると、避けきれなくなった少女の額に木刀が直撃した。
『はぁ、今日は終わりだ』
『待って!もう少しだけお願いします!』
『やったって変わんねえよ。見切りだけは上手いから褒めてやろうと思ったのに、最後で台無しじゃねえか』
『だって……』
『だってもくそもねえ!』
『あ、兄上が何も教えてくれないからでしょ!感覚だけじゃわかんないよ!!』
『ああそうかよ!なら父上にでも習ってろ!』
半べその少女を見捨て、少年はその場を去った。

残された少女はただそれを見つめ、ぼーっと立っておく他無かった。
『強く、ならなきゃいけないのに……』
大粒の涙を流し始めたところで、辺りがまた真っ暗になった。
記憶の再生が終わったのだ。
「終わっちゃった!これ本当に闇なの?」
「もう用は済んだだろ。早くここから出せ!」
そう言って水無月に切りかかる。
避ける動作ができず……否、避ける動作をしなかった。
「おっと!ここじゃあ攻撃は当たらないんだ。すり抜けちゃうからね」
何を言うでもなく、ただ鞘に刀を仕舞う。
顔だけはじっと水無月を見つめたまま逸らさない。
「そんな怖い顔しないでよ。そろそろ時間だし、時期に出られる」
どこかから光が漏れだし、その光に目が慣れる頃には元の場所へと戻っていた。
どうやらこの呪いには時間制限があるようだ。
「……戻ってきたのか?」
「嘘はつかない主義なんだ。さてと、もうお遊びは終わりだよ。早く長月姉様の所へ行きたいからね」

 

 

少し離れた森の中。
飛ばして走る2つの影があった。
真っ赤なその見た目は、緑の背景にくっきりと映る。
2人の顔はまるで分身したようにそっくりだ。
眉や口元、髪型や身長までほとんど同じ。
唯一違うのは目元と性別くらいだろう。
「もうすぐかな?」
「あと少しだろ!」
駆けている途中、ふと頭に声が響く。
翠閃だ。
『てめえら何勝手に行動してやがる!』
「「翠兄が行けって言ったじゃん!」」
『言ってねえよ殺すぞ!!』
「ご勘弁!」
「やだね!」
べーっと、見えない相手に舌を出す。

『てめえら帰ったら覚悟しとけよ』
「「ひゃいい!!」」
ドスのきいた声で脅しをかけると、流石に効いたようで全身を震わせた。
しかし駆ける足は止まらない。
『どうせ言ったって引き返さねえんだろ。俺も後から向かう。……無茶すんなよ』
そこで声がブチっと途切れた。
彼なりの優しさだ。
「こうなったら!」
「やるしかない!」
2つの赤い影は、目的地へと進んでいった。

術について

3の島のどこかに存在している村には、修行を積んだ忍という者が居る。

修行する事で己の魔力を高め、魔法道具無しで扱う魔法をここでは術と呼ぶ。

魔法と同じ5つの属性があり、発動する時は火魔法や草魔法ではなく

火→深火術(しんかじゅつ)

草→深草術(しんそうじゅつ)

水→深水術(しんすいじゅつ)

光→深光術(しんこうじゅつ)

闇→深闇術(しんあんじゅつ)

という単語を頭に付ける。

魔法道具(主に武器)を用いて魔法を発動させている者もいるが、この村では魔法という概念が無いため全て術と呼ぶ。

 

 

魔法と同じ点は、スペルストーン(ここでは輝石(きせき)と呼ぶ)を所持していなければ使えない所。

魔法使いはアクセサリーにして持ち歩くが、忍は属性モチーフの形にして額当てに埋め込んでいる。

また術は魔法に比べてレパートリーが少ない為か、ナンバリングではなく直接名前を付けて管理している。

特別に規則は無いが、ほとんどの者が造語を含めた四字熟語をそのまま名前にしている。

 

 

術も属性によって得意な効果が異なる。

魔法と同じなので、詳しくは魔法記事参照。

 

 

 

妖精について

魔法の記事でも紹介した通り、属性毎に妖精が存在する。

火、サラマンダー

草、シルフ

水、ウンディーネ

光、ピクシー

闇、インプ

火草水の妖精は至って普通に暮らしているが、ピクシーとインプは伝説とされ未だ見た者はいない。

人には見えないからだとか、絶滅しているからだとか、諸説あるが真偽は不明。

純血の妖精は例外なく対応した属性しか使うことができない。

詳しくは魔法記事参照。

 

妖精は人間に比べて背が低く、羽があるのが特徴である。

一番早く飛べるのがシルフ、他は同じくらい。

羽の形は人それぞれ。

耳の形状は種族によって異なる。

下記の図参照。

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なおピクシーとインプは想像上の生物に等しいので、こちらも真偽は不明。

また、サラマンダーは褐色肌、シルフは色白肌が多い。

髪や目の色はだいたい属性に対応した色となる。

ただし異属性の混血の場合は除く。

 

 

 

 

 

17話 あとがき

前回に勝るとも劣らない怒涛の展開!

皆様ご理解頂けたでしょうか?

ずーーっと書きたかった3の島編、楽しませて貰います!

戦ということで、ファンタジーには付き物な戦闘シーンが!ようやく!ようやく!!出てきます!!!

わかりやすい構成になるよう精進して参りますのでどうかお付き合いくださいませ。

新しいキャラも登場しましたので、例の記事も更新しておきます。

 

さて、数年悩みに悩んだ国府宮の性別が決まりました。

妹の桜樹と、兄の夜桜。

元々のキャラ設定を掘り返すと実は性別が逆なのです。

そもそも姉弟ですら無かったわけですけど。

そして次回また新しい人物が登場しますが、一旦収まると思います。

なんせ仲間はもちろん敵もいますからね。

がんばって覚えてねとしか言えません…

そう言えば術についての記事も作らないとですね!妖精もあったね!

することが山積みだぜ!

次回もよろしくな!

 

 

 

幻石〜5つの石を探す旅〜 第17話

どこかの屋敷の庭で、桃色の髪飾りを付けた黒髪の男性……否、女性とも見て取れる中性的なその人物は、いつもと変わらぬ日々を過ごしていた。

いつも通り手入れされた大層豪華な庭を、いつも通り眺めながら歩く。

しかし今日は1つだけ、いつも通りとはいかない出来事があった。

「……矢文?」

木造の屋敷に綺麗に突き刺さった一本の矢文。

それを引き抜き、括りつけられている紙を解く。

何の変哲もないただの紙切れだ。

中には達筆な文字で、こう書かれていた。

『1週間後に戦を仕掛ける』

「なんだ?悪戯か?」

くだらない、とその紙を捨てようとした時。

ちらっと見えたその2文字に、悪戯ではないと確信を持った。

それは手紙を読んだ人物がよく知る名前であった。

何故なら……。

「これが本当なら……くそっ!!」

それは昔、その名の者が自分の付き人だったからである。

 

 

第17話「シフト」

 

 

「戦って……なんで!?そんなことしたら城に見つかってるはずじゃないの!?」

「私達の村は、忍が多数住む場所です。隠すことは得意ですから」

3の島の奥の方に存在する隠れた村。

外部から人が行くことは出来ず、何処にあるかは知られていない。

そこに住む忍と呼ばれる者達は、その名の通り、忍ぶことが得意なのだ。

忍の手により、村は存在を隠すことができる。

「いつからですか?」

「半年程前からです」

「半年前ぇ!?」

真騎に回復されながら、淡々と答えていく青年。

話しを聞く限りでは仕掛けてきたのは向こう、3の島の長らしい。

大方回復が終わったのか、青年は起き上がる。

「何故城に助けを求めぬのだ?戦を隠す程の力があるのならば、敵に見つからず伝える事も容易かろう」

「敵が敵だからですよ……私達はこの戦から逃れることなどできないのです」

「なんで?王様にでも言えば速攻裁かれて終わりじゃん?」

「そんな簡単な事ではないんです……元を辿れば、火種を撒いたのは私達の方なのですから」

 

 

某所。

そう呼ぶに相応しいこの場所には人気は無く、ただひたすらに時が流れているばかりだ。

その中に建てられた綺麗な木造の家に、桃色の髪飾りを付けた者は居た。

「一番大切な奴から救え、か……」

青年が立つ大広間には、虫一匹さえいない。

否、虫でさえ来ることができないのだ。

矢文に書かれていた2文字の名前は、本人が書いたものに違いない。

何故ならこの名を知るものは、この村にはその家族と国府宮家の者しか居ないから。

虫でさえ入ることができないこの場所に矢文を射ったのは本人だ。

何故なら、その人物ならこの場所に入れるからである。

監視をくぐり抜ける以前に、この村に辿り着く事が出来るのはこの村出身の者のみ。

つまり入れる者は仲間とみなされ、安易に攻撃される事はないのだ。

もちろん、監視されない訳では無い。

「てめぇの大切な奴さえ救えねえのに、言えた口じゃねえな」

そう零した時、近くに突然翡翠の目をした少年が現れた。

何をするでもなくただ突っ立っている青年に、少年は口を開く。

「悠長なこったなぁ。報告だ」

「うるせえよ。で、わざわざ何を言いに来た?通信すればいいだろ」

「直接言った方がいいと思ってな。……桜樹を港へ逃がした」

「青梅達はどうしてる?」

「村の中で今も戦ってる。数十の敵兵に囲まれてな」

「はぁ!?村の警備はどうなってんだ!救援を寄越せ!早くしろ!!」

「言われるまでもねえよ。警備はもう意味ねえからぶち込んだ。けどまだ人員が足りねえ。どっから割く?」

元々人口の少ない村だ。

加えて敵は3の島の長。

兵数の差は目に見えていた。

「蒼泉(あおい)達はどうしてる?部隊ごとやれ」

「そいつは無理な願いだな。あいつらも前線で敵と交戦中だ。しかもかなり強い」

「……損傷はどのくらいだ?」

「青梅達は完全に押し負けてる。主力は1人だが相性が悪い。蒼泉達はなんとか戦えてるが、それでも敵2人に対して4人と回復1人。雑魚はそれ以外がやりあってるってとこだ」

明らかに偏る兵数の差を、こちら側は戦力で補っている。

これも普段から鍛錬を怠らないおかげ。

しかし実戦慣れはしていないため、どうにも事が上手く運ばない。

ましてやリアルタイムで大勢に指示を出すなど、訓練していても難しいだろう。

「俺は難しい事はよく分からねえし、どれが最善策なのかもわからん。だから俺が最前線へ出る。後のことは蒼泉にでも聞け。もっとマシな回答されるだろうよ」

「おいてめえふざけてんのか?冗談抜かしてると殺すぞ」

「冗談言ってるように見えるか?あいつに任せた方が上手くいくって言ってんだよ。少なくとも俺より頭が切れるだろ」

「まあ一理あるな。てめえに任せてちゃあ壊滅しちまいそうだしな」

「そうかよ。だったら行け、俺は最前線へ向かう」

「了解」

それだけ言うと、少年はまた姿を消してしまった。

「さて、いい加減俺も暴れに行くか」

 伸びをしながら、青年もその場を去った。

 

 

「敵の大将は人質として送り込んだ元仲間ぁ!?」

青年から説明を受け、驚きを隠せないベネジクト。

3の島の長は元々村の者、しかも現将軍の付き人だったらしい。

「ですから、逃げる選択肢など我らには無いのです」

「しかし何故お主はそこまで知っておる?ただの平民ではないのか?」

「私は……国府宮 桜樹(こうのみや おうじゅ)。現将軍である夜桜様は、私の兄上です」

「じゃあ王子様!?そんな格好してんのに!?」

そんな格好、とは、ボロボロになった弓道着のこと。

袴の緑は血の赤と補色になっており、あまり目立たない。

「い、いえ……姫……です」

「えっ、ハチマキまでしといて?」

「人の事は言えぬが、紛らわしい容姿だのう」

すると桜樹、額に巻いたハチマキをするすると解いていく。

「この格好は病弱な私の為に、少しでも夜桜様の方に目がいくようにと計らってのことなのです。ハチマキもそう」

露わになった額には、桜の花弁が刻まれていた。

綺麗な桃色だ。

「この紋様は国府宮の血を受け継ぐ証。隠しておけば狙われる可能性も薄れると……いえ、今はそんなことどうでもよいのです!どうかお力を貸して頂けないでしょうか……?」

「しかし我等はただの旅人だ。大した事は出来ぬぞ」

「夜桜様の所まで私を連れて行ってくださるだけでよいのです!お願いします!」

「関係ないうちらを危険にさらそうっての?それはちょっと調子のってんじゃない?」

「それは……っ!ゴホッゴホッ!」

突然胸部と口を押さえ前に屈む桜樹。

元々の体質のせいで、回復されてもなお身体は弱っているようだ。

「私ではこれ以上の回復はできかねます。早くお医者様に診てもらった方がよろしいかと」

「自分だけ逃げ延びるなど、私には……っ」

「仕方がない。我が背負って行こう」

「本当ですか!?ありがとうございます!この御恩はきっと……!」

桜樹が微笑む。
今にも周りに桜が舞いそうな柔らかい笑顔だ。
対するベネジクトは、その花を全て散らしていきそうな勢いで白姫に言った。

「はあ!?あんた正気!?」

「旅の目的を忘れたか。どのみちここを通過せねば調べることも叶わんのだ。道案内もしてくれるというのならば、乗らぬ手はあるまい」

「そうかもしれないけど!」

「何より我なら気付かれずに向かえる。消えれば良いのだからな」

「ちょっと待って。うちら置いて行こうって訳?一番納得できないんだけど」
いつもの喧嘩とは違う、ピリピリとした空気が流れる。
命がかかっていると言っても過言では無いのだから、当然のことだ。
「お主らも来れば良かろう。我に間接的にでも触れておけば効果は得られる」
「そうじゃなくてーもーー真騎ー!!」

「羽前さん1人で行くのは私も反対です。そうですね、敵から見つかる可能性が高まりますが……」
真騎は桜樹に当てていた杖を白姫に向け、呪文を唱える。
「光魔法、その35」
杖から放たれた黄色い光が白姫を包み込む。
やがてそれは目視出来なくなり、存在を消した。
「自動回復してくれる膜です。偶然出来た魔法なので、効果はあまり期待しないでください」

「十分だ」

「で?うちらはどうすんの?」

「もちろん、このまま旅を続けます」

真騎の嘘偽りのない笑顔に、ベネジクトはただ唖然とするほか出来なかった。

 

 

再び舞台は戦場へ。

青年と別れた緑の少年、翠閃(すいせん)は、とある雑木林の木のてっぺんに居た。

「この辺でいいか」

深呼吸。

それに続けて指を組む。

「深草術、百花繚乱!!」

目を閉じ、精神を統一させる。

ゆっくりと、そして確実に、聞こえないはずの戦場の音が耳に伝わってくる。

サージャが行っている通信と同じ物と言えば少し違うが、それに限りなく近いものだ。

忍と呼ばれる者達は、"魔法"ではなく"術"を扱う。

用いるものは両方とも潜在している魔力だが、決定的に違うことが1つだけある。

それは魔法具、いわゆる杖などを使わないこと。

修行によって魔力を高め、己自身の身体で発動するのだ。

「蒼泉、勅命だ。聞け」

『簡潔に頼む』

「夜桜が指揮を放棄した、お前に権限を託してな」

『予想はしていたが、本当に丸投げなさるとは……はぁ、戦況を教えろ』

蒼泉は夜桜直属の忍班のリーダーであり、忍全てをまとめあげる家系の跡取り娘でもある。

その肩書きに恥じぬ頭脳と技能を持ち合わせ、皆の信頼も厚い。

『……なるほどな。夜桜様が最前線へ出向かれたのなら、私達は村の方へ下がる。夜桜様から敵を遠ざけつつ青梅達と合流するぞ。いいな』

 「相変わらず指示がはえぇこったな。了解だ」

そう言って、組んでいた指を解き目を開く。

再び深呼吸をし、先程と同じ術を発動する。

今度は戦場にいる味方全員に話しかけているのだ。

「全軍に告ぐ!気付かれぬよう少しずつ後方へ行け!手の空いた奴は青梅部隊の元へ向かうこと!青梅部隊は援軍が来るまで耐えろ!以上!!」

『えぇー私達は耐えろって酷くないですかー!?結構ギリギリなんですけど!?』

「黙って殺り合ってろ。敵はガキ1人同然だろうが」

『状況知ってるくせに!翠閃の鬼!』

「あ゛ぁ゛?そんな舐めた口聞けるようならまだ余裕そうだな?援軍やらねえぞ」

『分かりました!分かりましたよお!!』

指を解く。

伝えるという任務を終えて木のてっぺんから少し降りると、太い枝に腰をかけた。

「動きすぎたな。澄桃(すもも)んとこにでも行くか」

そしてまた、その場から姿を消した。

 

16話 あとがき

詰め詰めの回でしたが、皆様ご理解頂けたでしょうか?

アレス城と通信を取っている所でなんと新キャラが3人も出てきましたが、覚えなくても大丈夫です。

浅葱は番外編でチラッと出てきてますが。

という訳で、登場人物一覧に追加しておきます。

 

それではお次に、こちらのイラストをご覧ください。

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とうとう使う日がやって参りました!

次回より3の島編に突入致します!

こちら去年の10月半ばに描いてるんですけど、このペースで行くと一年経ちそうですね。

不思議だなー!

終了する頃にはこの絵の意味が分かる…かもしれません。

ゆっくりですがまだまだお付き合いくださいませ!

それではまた次回でお会いしましょう。