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幻石〜5つの石を探す旅〜

素人の一次創作、幻石のサイトです。

15話 あとがき

やっとこさ完成致しました!

詩貴姐さんの意外な特技でみんなが歓喜する回です。

私も振る舞われたい。

※作中に青年と出てきますが、その年頃の男女を指す語という意味で使っております。

 

今回時間がかかった理由としては、次回でやりたかった構成?があったからなのです。

でも書いていくうちにすっかり変わってしまい、ただ放置してただけになってしまいました☆~(ゝ。∂)

その構成にたどり着くためには今回の15話でどこまで進めればいいのか、そこまで進めて次回は次数ぴったりまで進められるのかなどめちゃくちゃ悩みました(変わりましたが)。

ちなみに毎回4000字くらいです。

 

最後に新キャラがドバっと出ましたので登場人物に増やしておきます。

どこの人なんでしょうね!(すっとぼけ)

はい。

いつぞやに予告ポスター(笑)を描いたのですが、次回まではまだ2の島編です。残念。

なので次回のあとがきにポスターは掲載します!

Twitter(@rarin_itigo)の方では先に上げているので、早く見たいという方はそちらからどうぞ。

10月に上げました(頭抱え)

 

ではでは、次回もごゆるりとお待ちいただければと思います!

閲覧ありがとうございました!

 

幻石〜5つの石を探す旅〜 第15話

「王女様がねえ。やーっと探し当てたのな、俺らの存在」

あれから数十分。

なんとか説明して理解して貰う事が出来た。

最後は詩貴が何か言っていたようだが……。

「やっと、とは?」

「んん?そろそろバレても良いんじゃねえかなって思っただけだ。幻石の在り処もな」

長年に渡り伝説としてしか語り継がれなかった幻石。

それがつい最近シャンによって確定された。

幻石は存在して、さらには守り人までいること。

守り人が幻石その物であることは特定できなかったが、それだけでも凄いことだ。

「王女様は本で見てたって、真騎言ってたよね?」

「はい。珍しく図書室に篭っていましたね」

「じゃあその本書いたの、誰?」

 

 

第15話「幻石流昼ごはん」

 

 

 「それなら、2人程心当たりがあるねえ。あたしらの事を知っていて、かつ文才のある者」

「あなた方を知っている者が、白道さん以外にもいらっしゃるのですか?」

「ああ、居るさ」

詩貴は近くの岩に腰掛け、扇子を取り出しながら続けた。

「1人は知識の幻石。もう1人は……あんたの母親さ。あんただよ、白姫」

「母上が……?」

「お前んちにも何冊か有るんじゃねえのか?暇があれば書いてたし」

「妄想を綴ったような書物ばかりだったがな」

白道の妻であり白姫の母親である咲姫(さき)は、異世界から来た人間である。

まだそれ程人間が繁栄していなかった頃。

妖力の強かった咲姫はここへと迷い込んだ。

その後白道と恋に落ち、白姫を授かり、一生を終えている。

 「しかしそれならば、何故城にあるのでしょう?」

「誰かが盗んだんじゃないの?」 

「それは有り得ぬ。あの辺に人など来んからな」

深い森の中に佇む家。

1人で住むにはあまりにも広いそこは、ただただ違和感を放っているばかりだ。

たまに小さな魔物が覗きに来るくらいで、人はおろか妖怪すら見当たらない。

時には家ごと見えなくしてしまったこともあるという。

 「書いたやつが誰だろうが、それを信じた王女様は素直だな。この世の中嘘だらけだってのによお」

 「シャン様は鋭いお方ですから、何か感じ取ったのかもしれませんね」

あれでもこの世の王女。

英才教育を受けて育ち……と言いたいところだが、王の方針によりのびのびと育っている。

そのせいかおかげか、知識は少ないが、王女にふさわしい成長を遂げた。

 「その書物はともかく、はよう次に向かわねばならぬのではないのか」

「そうですね。知識の幻石に会えば真相もわかるでしょうし。行きましょう、3の島へ」

「その前にご飯食べようよー!歩きっぱなしで疲れたー!!」

「あっはっは!今日も元気だねえ。あたしがご飯作ったげるよ。乙人、あんたは手伝いな」

 「えー!?なんで俺が!!」

 

 

「どんなゲテモノが来るかと思ったら普通に美味しそうなの来た……」

「なんて想像してんだい。人が食べる物は把握済みさ」

「やっぱり妖怪は人とか虫とか食べるの?」

「食わぬわ。阿呆めが」

出てきた物は、野菜たっぷりのスープとパン、そしてデザートの果物。

振る舞うと言っただけあり、料理の手際は良く見栄えも綺麗だ。

さらには母親が作ったような愛情も目に見えて注がれている。

そう、目に見えて。

「……人参がハート」

「可愛いだろう?」

子供が野菜嫌いなのはここでも変わらない。

小さい子供が楽しんで食べられるように、この世界の母親も日々工夫しているのだ。

白道が大の野菜嫌いでねえ、よくこうしたもんさ。……今もだがねえ」

中身どころか舌も子供なようだ。

「やっぱうめえなー!姐さんの手料理!」

「あんたはいつも美味しそうに食べるねえ。作りがいがあるってもんだ」

乙人が手伝ったのは材料調達。

料理には一切触れてはいない。

あらゆる空間を繋げて、食材や調理器具などを集めていた。

「ご馳走して頂きありがとうございます。お返しできたらいいのですが、料理はできないものでして……」

「構いやしないさ。好きでやってんだからね」

その後残飯が出ることは無く、綺麗に平らげたのは言うまでもない。

 

 

「美味しかったー!また食べたい!」

「久方ぶりだのう、手料理を昼に振る舞われるのは」

 後片付けも終わり、またもやのんびりタイムに入っているところだ。

今は昼の1時半頃。

休むにはまだ早い。

「休憩も終わりましたし、さっそく3の島へ向かいましょうか」

すると何か閃いたようで、ベネジクトが指を鳴らして立ち上がった。

「そうだ!乙人に連れてって貰えばいいんじゃん!知識の幻石のところに!」

その提案に、皆が賛成した。

しかし当の本人はと言うと……。

「あー悪い、できねえんだわ。俺様はあくまでも空間の移動だからな。特定の人のとこにゃ行けねんだ」

「は!?無能!役立たず!ポンコツ!!」

心が折れる音がした」

空間と空間を繋いで移動しているだけなので、特定の人物に1発で会えるような便利な能力ではない。

その足で探さなければならないところは、他の生物となんら変わりはないのである。

「つまり何処にいるかわからないって事ですか?」

「最近はあんまり連絡取れてないからねえ。それに居場所まで毎回言い合いなんてしてないさ。変な奴にバレでもしたら面倒だからね」

「今から連絡取れたりしないの?」

その言葉を聞いて、乙人と詩貴は互いに顔を合わせる。

しばらくして目線を逸らすと、2人の口から出たのは「無理」と言う一言だった。

「なんだ今の間は……」

「俺らにもいろいろあんだよ。残念ながらこのメンツじゃあ無理だ。悪ぃな」

「じゃあせめて3の島まで連れてってよ」

「それなら構わ」

「……船乗らないの?」

乙人を遮って放たれた声の方には、純粋な目をしたレストが立っていた。

表情こそ変えないものの、悲しい感情がひしひしと伝わってくる。

「船、乗りたいんですか?」

こくっと静かに頷き返事する。

1の島からこちらに来る時には、あいにく時間に間に合わず船に乗れていない。

本当はその時も乗りたかったのかもしれないが、感情をあまり表に出さないレストに誰も気づかなかったのだ。

「じゃあ船で行こう。こんな目でお願いされちゃあ断れないでしょ」

「だが船は通っておるのか?港には行けぬのではないのか?」

「港に通じる道はちゃんと通れるぜ。奴ら賢いから別の道作ってやがんだ。どの道からもここには来れねえがな」

白姫達が乙人を追って来た道とは別の道から、港には向かう事が出来る。

ここだけ港が無ければ他の島にも影響が出てしまうからだ。

道案内の看板も建てられていたのだが、急いで来たため確認しそびれていたようだ。

「そうと決まればさっそく行こ!また乗り遅れてもやだし」

「じゃ、せいぜい頑張れよな」

もうすぐ最大まで日が昇る午後2時。

石に戻った乙人と詩貴を鞄に入れ、4人は港へと歩き出した。

 

 

「乙人に移動頼めば良かった!無駄に歩いたー!!」

「腹ごなしには丁度良かろう」

来た道を迷うことなく戻り、港行きの看板が指す方へ進むこと約一時間。

ようやく港へとたどり着いた。

大きな船から小さな舟まで、数は少なかれど活気に満ち溢れている。

「次の3の島行きの船はいつ出航しますか?」

「3の島行きですか?今は運航してないんですよ。すみません」

「はぁ?運航してないってどういうことよ?」

「向こうの港が封鎖されてしまっているんです」

「封鎖?どうしてですか?」

「それが分からないんです。行っても追い返されてしまって……」

港が封鎖されれば、物資が届けられなくなり商売が滞る。

更には交通手段までもを失い、生活にさえ支障をきたすだろう。

「……船乗れないの?」

「あの、どうしても船に乗りたいのなら、個人で運航している方をご紹介しますよ。行けないのはあくまでも、商業用やたくさんの人を運ぶ大型の船なので」

 「本当ですか!?ありがとうございます!」

自分は今離れられないからと、名前と所在を書かれた紙切れを渡された。

ここから少しだけ離れた小屋に、その人物は居るようだ。

「さっさと行かなきゃ!日が暮れちゃう」

 

 

ところ変わって古風な家の建ち並ぶ住宅街。

一つの駕籠(かご)を引き連れ、数十の人が歩いていた。

否、数十の人に囲まれていた。

「こんな所まで……村民に被害を与える訳にはいきません!どうか食い止めてください!」

駕籠の中から指示を出す1人の影。

隙間から覗く桃色の目からは、焦りが見て取れた。

「しかしこの数では対抗すら……!」

「……私が援護します。出してください」

「な!それはいけません!貴方様はそこにいて頂かなければ……」

「この窮地の中黙って見ているなんて出来ません!」

「分かりました……」

駕籠が降ろされ、中から青年が出てくる。

手には武器である弓矢。

敵はもうそこまで迫ってきていた。

「青梅(おうめ)、最優先するものは?」

「……村民です」

「分かっているなら大丈夫ですね」

ゼロ距離から放たれた矢は、緑色に光っていた。

魔法が込められているようだ。

「少しばかり寝ていてくださいね」

その後も攻防が続き、敵が半分程減った頃。

飛んでいく矢の数も少しずつ減っていた。

たった十分程度の間で、青年の額には汗が浮かび、息も上がり、目も虚ろになっている。

とうとう地面に膝を付いた青年の元に、青梅と呼ばれた女性が駆け寄る。

「桜樹(おうじゅ)様!!」

「村民を優先しろと……っ……」

「私には桜樹様を見捨てるなんて出来ません!翠閃(すいせん)!いるんでしょ!」

「はいはい。運べってんだろ」

何処からか現れた翠閃は、夜桜を背に乗せ敵を惑わすように一瞬で抜き去っていった。

もちろん追ってくる者も居たが、速すぎて追いつけなかったようだ。

「お前らはこの私!桜樹様一番の従者、国守(くにもり) 青梅が相手してやる!桜樹様は眠らせてたけど、あの方が居ない今は……全てが紅く染まると思え」

眠っていた敵の心臓に刀を突き刺しながら、言い放った言葉を証明した。

 

 

14話 あとがき

切るタイミングを見失い、変なとこで終わってしまいました。

次回までに頑張って説明しているんだと思っててください。

なので今回少しだけ長めとなっております。

それと登場人物の乙人の所、新しくしておきました。

 

それでは補足を少々。

せがれは昔は男女両方に使っていたらしいので、特に白姫の反論はありませんでした。

という訳ですので、別に男の子じゃないです。女の子でもありませんが。

 

空間の説明、理解していただけましたでしょうか。

おそらくあれでは無理でしょうから、とりあえず通れないんだと思っていてください。

ここの白姫が透明になって突破するシーンも初期からありました。

形に出来て嬉しい!!

 

詩貴と乙人の2人を含めた守り人全員は、結構前から居るので名前が独特です。

苗字は全員辞書からだし、下の名前は見た目や司る物の連想から。

詩貴は四季、乙人は乙女(顔がかわいい)からきています。

けど乙人は別に女顔って訳じゃないんですよね。

謎です。

乙人よりも知識の子が可哀想で仕方ありません。

でも変える気はないよ!今更って感じするんだ。

 

では、長々と失礼致しました。

今回も閲覧ありがとうございました!

 

幻石〜5つの石を探す旅〜 第14話

「そうだ!俺様が乙人!悪い奴らは俺に任せな!」

彼はそう言って決めポーズをとった。

「決めポーズもダサ……」

が、ベネジクトのお眼鏡にはかなわなかったようだ。

「さっきから聞いてりゃてめえ、俺の悪口ばっかり言いやがって!!」

「ちょっと!2人とも会って早々喧嘩はやめてください!」

周りにいた子供達はマセているのか、乙人に対して哀れみの目を向けていた。

 

 

第14話「仮面の下の真実」

 

 

「そんで?俺に何の用?見かけねえ顔だけど……もしかして俺に会いに来たとかか!?」

「いや無いから」

「わざわざお主に会うために遠路はるばる来るわけなかろう」

「心が割れそう」

子供達に別れを告げ、場所を変えて話していた。

「あなたが物知りだと聞いたので、お尋ねしたい事があって参りました」

「おう!答えられる範囲なら何でも答えるぜ」

この態度から本当に物知りなのか目を疑うが、彼は有名な情報屋。

まるで実際に見てきたように話すのだと、居場所を聞き回っていた際に誰かが言っていた。

テレビや電話は無いので、一般人が遠くの事を知る術はほとんど無いのだ。

おそらく乙人は、そういった類の魔法を使えるのだろう。

「幻石の守り人、ご存知ですか?」

真騎が端的に問う。

それに対し、乙人は少し間を置いて答えた。

「……知らねえな」

「怪しいのう」

ベンチに腰掛けている乙人の左後ろから、顔を覗き込む白姫。

ギクッと言わんばかりに顔色を変えて、さらには冷や汗までかいていた。

「わーったよ。話しゃあいいんだろ。けどその前に……そこのガキの鞄の中に入ってる石、見せてくれよ」

ニヤリと笑い、レストの鞄を指差す。

この中に入っている石、それは時の幻石。

しかし幻石を持っている事も、鞄の中に石が入っている事さえ話してはいない。

「これですか?どうぞ」

幸い青色をしているので、スペルストーンや宝石の類いと間違えてくれるだろうと、乙人にそれを差し出した。

むしろここで出さなかった方が怪しまれると判断したのだ。

「きれーな石っころだなー!……なんで俺がそこに石入れてんのわかったか知りてえか?」

せっかちなのか答えを待たずに立ち上がり、走り去りながら言い放つ。

「ヒーローだからさ!これは持ち主に返させてもらうぜ、泥棒さんよぉ!!」

向かった先は森の方。

ルボワが帰されると言っていた2の島森林《ツーフォレスト》だ。

「あいつ!何を根拠に泥棒扱いしてるわけ!?追いかけるわよ!!」

迷うことなく、4人は乙人の後を追った。

 

 

ツーフォレストの入り口を無事通過し、しばらく進んだ頃。

何十分か歩いてようやく異変に気づき始めた。

「ルボワさんが仰っていた通りですね」

「森だからってのもあるけど……でも絶対あの木さっき見たもん!!何ここ!?」

進んでも進んでも同じ道。

一本道をただ真っ直ぐ進んでいるだけなのに何故かぐるぐると回っている。

「そうだ!みんなここでストップしててよ。うちだけ先に進んでみるからどうなったか見てて」

走って進むベネジクト。

言われた通り見ていると、突然何かに呑まれていくように姿を消した。

魔法を使う素振りは見えなかった為、おそらくそれではない。

そして消えたベネジクトが現れた場所は……。

「はぁ!?何であんた達がいるの!?」

「お主が居ろと言ったのだろう」

つまりまとめると、前に進まない原因は空間の歪みのせい。

一定の場所を通り過ぎると、後ろにワープしてしまうのだ。

ワープしている感覚はもちろん無い。

 「こりゃ同じ景色なわけだわ」

「……何故彼奴は通れたのかのう?」

「そういやそうね。どっか隠れてるとかだったりして」

辺りを見回してみるが、人影すら見つけることはできない。

「これでは取り返せませんね……」

「彼奴め、見つけたらとっちめてやるわ」

 「今回は白姫に賛成」

何度も何度も挑戦してみるが、やはり前には進めない。

するとどこかから聞き覚えのある声が聞こえた。

低すぎず高すぎず、少し中性的なそれは、あたりに響き渡る。

「よーうお前ら。ぐるぐるぐるぐるループしてよぉ、まるで檻の中の魔物のようだな。その先に行こうとしたって無駄だぜ。何したってな」

「貴様、何処に居る!?」

「探してみな。てめえら得意だろぉ?人探し。とくにそこの女ぁ、ベネジクトつったか?全属性使える魔法使いじゃねえか。魔法使ってみろよ」

続けて笑い声。

情報屋の名は伊達ではないようだ。

しかし今の四人にとって、乙人が何故ベネジクトの名前や素性を知っているのかなどどうでもよかった。

「いい度胸じゃん、でもさ。うちはまどろっこしい事は嫌いなんだよね!!火魔法その25!!!」

辺りの木々は真っ赤に燃え盛り、ベネジクトの髪色もまた、真っ赤に燃え盛っていく。

しかし残ったのは木の灰だけだった。

「何処に居んのあいつ!?」

「落ち着いてくださいベネジクトさん。あぁ、こんなに燃やして……」

「早う鎮火せねば大騒ぎになるぞ」

「わかってるわよ。水魔法その6」

何処からか現れた大量の水で、それ以上火が燃え移る事は無かった。

 「しかし今の火で目印が出来た。何処で戻されるかがはっきりと分かるのう」

「そんなこと分かったって戻されるもんは戻されるじゃん」

「まあ見ておれ」

またも全員で進む。

そして何度か繰り返すうちに、とある異変に気がついた。

「ちょっと違うね」

「うむ。毎回戻される場所が微妙に違う」

「まさか気づいて居たんですか?」

「違和感があったくらいだ。周りの木々にな」

燃やされたことにより外観ががらりと変わったおかげで、景色の違いがわかりやすくなったのだ。

ワープするので、当然景色が突然変わる。

その境目が毎回違うのだ。

白姫が違和感を抱けたのは、おそらくずっと木々に囲まれて生きていたから。

「少し試したい事がある。皆我に捕まっておれ、離れるでないぞ。音も発さぬ事だ」

そう言ってまた歩き出す。

そしてまた消えた。

しかし見えてきたのは、先程とは違う開けた景色。

「え?え??なんで!?!?」

「言ったであろう。離れるな、音も出すな、と。消えたのだ、彼奴の視界から」

白姫の能力は透明になる事。

つまり消える事。

自分に触れている相手も消す事ができるのだ。

「どういう事ですか?それにいったい誰の視界から……」

「おいそこの白いの!!白道のせがれだな!?」

「元凶のお出ましだな」

どこからともなく登場した乙人。

やって来るや否や、すぐに白姫に突っかかる。

「あの、説明を……」

「あぁん!?んなこたぁ今どうでも良いんだよ!黙ってろバナナ!!」

「バ、ナナ、あ……」

とてもショックだったのか、真騎の魂は抜けかけて固まっていた。

全身真っ黄色から連想したのだろう。

「答えろ牛乳!!」

「何故お主は食い物にしか例えられんのだ……そうだ。数日前知ったばかりだがな」

「てかなんで!?知り合いなの?なんであんたがあの人の事知ってるわけ?」

2人の会話に割って入り、一方的に質問する。

それに対して乙人はこう答えた。

「言ったろ、俺様はヒーローだ。色んな事知ってんのさ……なんてもうおせえか。知り合いだぜ。昔っからのよ」

「と、とりあえず、その石返してください!」

「やーだね。俺が元の場所に返しといてやるよ。持ってるってこたぁ話したんだろ?姐さんと」

「あなたやっぱり知ってたんですか」

「たりめぇよ!俺様がてめえらの探す幻石だからなぁ!」

一呼吸間を置いて、ベネジクトと真騎の驚嘆の声が続いた。

「気づいておらんかったのか……」

「とんだクソガキだと思ってたもん。こんなやつが幻石でいいわけない!!」

「どうだ思い知ったか凡人ども!俺様のいってぇ!!」

いつの間にか石から戻っていた詩貴の扇子が当たった。

ここは安全だと察して出てきたようだ。

その拍子で乙人の仮面が外れた。

「黙りなクソガキ。何してるかと思ったら、あんたあんな事やってんのかい」

「っせーな!俺が何しようと勝手だろ!?姐さんは白道と居るから良いかもしれねえけどよ!俺は暇なの!!」

「ねえちょっと待って……あんた女の子だったの?」

仮面の下の素顔。

紫色の目はタレ気味でまつ毛は長く、眉毛も綺麗に整っている。

中性的ともとれるが、性格とのギャップもありさらに可愛さを引き立たせた。

「あぁ?こらぁルシャトリエの兄貴の顔だぜ。よって男だ。てかどう見ても野郎の顔だろうが」

「ちなみにあたしは蛇穴とやらと同じ顔さ」

 「え、男……泣きたい」

元々石である幻石に性別は無いため、どちらか断定する事は出来ない。

自分より整っている顔のモデルが男だと知り、先程の真騎と同じようになっていた。

「改めて自己紹介だ。顔はアフラ……だったか?だが、名前は別だ。空白 乙人(くうはく おつと)、覚えてくれよな」

「私は光闇……」

「おーっと紹介はいらねえぜ。なんてったってヒーローだからな」

「その事なのですが、何故あなたはそんなにいろいろ知っているのですか?」

「簡単なことさ。俺様は空間を司る幻石。移動なんてちょちょいのちょいよ」

 実際に見てきたように話しているのは、本当に見て回っていたから。

そういう類いの魔法を使えるのではなく、空間と空間を繋いで移動し、情報を得ているのだ。

「それともう一つ。先程の道の事ですが……」

「ああ。あれは万が一の為に仕掛けてんの。今回はお前らだけにしてたけどな」

「もっとわかりやすく言って」

「いつ異世界から人が来るかわかんねえからな。だいぶ安定してはいるものの油断は出来ねえし。俺がここを離れてても遠くに行っちまわないように、こっちの奴らとは鉢合わせねえように、互いに行けなくしてるってわけ。いつもは空間を繋いでるんだが、今回は俺様が直々にお前らだけを移動させてた。見破られちまうとは思わなかったがな」

空間がどこよりも不安定な2の島。

住む世界が違う者が見つかれば大騒ぎになってしまう。

その対処として、2の島先端《ツーポイント》には行けないというわけだ。

「なんでわざわざうちらだけ移動させたの?」

「そんなん面白いからに決まってるだろ」

「おかげで通れたがのう。頭の足りぬ奴め」

「その生意気な口へし折ってやろうか」

「それはこっちの台詞だっての」

個人の空間を操っていたため、突然消えたのに頭が追いつかなかったと言ったところだろう。

情報量は多いが、それを利用することは苦手なようだ。

「今度は俺様の番だ。なんで幻石を探してる?」

そこから全員での説明が始まった。

13話 あとがき

やってきましたツールーラル!

パーティメンバー最年少レストくんの故郷!

ここの住人は魔物と住んでいることが多いので、たくさん連れていようが驚かれることはないのです。

それにレストですからね、みんな知ってるんです。

田舎の繋がりって広いじゃないですか、みんな家族ーみたいな。

完全に偏見ですが、いいなと思います。

なのでここはそういうところです。

 

 

新しい人物が追加されたので、「登場人物」に追加しておきます。

ちゃんとしたキャラまとめ作る!っていつか言ったことあった気がしますが、いつになるんでしょうね!

私も楽しみです(他人事)

ではまた次回まで、しばしお待ちください!

幻石〜5つの石を探す旅〜 第13話

昼過ぎ、約束の時間。

ベネジクト、白姫、そしてレストの順に、待ち合わせの場所に指定された大きな木の下に集まっていた。

残るは真騎なのだが……。

「昼過ぎってだいぶ大雑把よねー……真騎、何かあったのかな?」

「彼奴にしてはちと遅いのう。我ですら来ておると言うのに」

という話しをしていると、遠くから黄色い人影が見えた。

真っ黄色な人物などそうそういないだろう。

「私が最後ですか。すみません……少し長引いてしまいまして」

 「いいよ、そんなに待ってないし。で、うちらなんにも見つけらんなかったんだけど、真騎はなんかあった?」

「申し訳ありません。成果無しです……」

しゅんとする真騎。

あの後掃除をしながら本を見ていたが、それらしい書物は見つからなかったようだ。

「普通に見つかる方がおかしかろう。また別の方法で探せばよい」

 「そうですね。ここには無いということで、2の島田舎《ツールーラル》に進みましょうか」

 

 

第13話「電波が届きません」

 

 

1の島の時よりも道は短いのだが、ここでまたハプニング。

「ねえちょっと」

「どういうことだこれは」

「たくさんいますね……」

今回は目の前ではなく背後。

殺気や敵対心こそ無いものの、数十匹の魔物がぞろぞろと付いてきているのだ。

これらはみんなレストの召喚獣

「かわいいのもいるけどさ、あんのごっついのはどうにかならないわけ?怖いんだけど……」

 「みんないい子だから……大丈夫」

今現在レストは、付いてきている魔物のうちの1匹に座っている。

鳥のようだが、背中は平で、翼は縦に長い。

まるでベッドのような魔物である。

種族名はベッドードーだ。

そしてこの魔物はなんと……

「ワタシタチ魔物ハ、ムヤミニ攻撃スル事ハアリマセンデスヨ。警戒心ノ強イ奴ヤ、暴走シテイル奴ハ別デスガ」

話すことが出来るのだ。

「あんたもよ!なんで喋るわけ!?意味わっかんないでしょ!?」

「努力シマシタ!」

「努力でどうにかなるものなのか?ちと不気味だのう」

「……ドドは頭が良いだけ」

「城のみんなにも見せてあげたいです」

 いくら魔物とは言え、人の言葉を話せるのは珍しい。

珍しいというのも、他に何件かそういう例が上がってきているからだ。

魔法が使える分普通の動物より知能が発達しているのだと、最近発表された。

「他の魔物は話せないの?」

「ハイ。レストヲ通ジテ話セマスカラ、困ル事ハアリマセンデス」

 「魔物の言葉がわかるってのも大変なのね」

 

 

 

案内されながらしばらく歩くと、1の島田舎《ワンルーラル》よりも少し賑やかな、2の島田舎《ツールーラル》が見えてきた。

人々は、魔物を大勢連れていても驚く事は無かった。

その中から1人、小柄な男性がこちらに駆け寄って来る。

「帰ってきたかレスト!全くお前は、城に行った後連絡も寄越さんで何をしておったんだ……それで、そちらの方々は?」

「一緒に旅する人達……」

「んん?旅?最初っから説明してくれんか」

「あ、あの……良ければ私から説明致しましょうか?」

「そうしてくれると助かる。なんせこいつぁ言葉が少ないからな。おっと、申し遅れた。俺はこいつ、レストの父親。ルボワってんだ」

「私は光闇 真騎と申します」

 「うちはベネジクト」

「羽前 白姫だ」

自己紹介をし終えると、立ち話はなんだからと、家に案内された。

 

 

「王女様直々に〜!?たまげたなー!レストにそんな大事な役目が回ってくるなんてなあ」

かなり驚いたようで、机に身を乗り出していた。

元々リアクションが大きいのも相まって、とても大袈裟にも見える。

「きっと彼にしかない特別な力があったからではないですか?あれは素晴らしい能力ですよ」

「ははっ!そうだろう?自慢の息子さ!あいつにはいつか世界中を見せてやりたかったからな。いい機会だ」

「安全面は私にお任せください。必ず無事にお帰し致します」

言葉と共に、座ったまま一礼。

「頼もしいね〜!頼んだよ、他の2人もな」

「頼まれるのは良いんだけどさ、うちらは警戒されててろくに話せもしないんだよね。どうすれば話せる?」

女子のベネジクトと、性別は無いが女性に見える白姫。

返事や必要な事は話すが、自分から近寄ってきたことは未だに無い。

それどころか完全に避けられている。

 「すまんなあ。半年前くらいに、女房が仕事とだけ告げて家を開けておってな。それ以来女は年齢問わず皆信用出来なくなっとるんだ」

たまに話していた近所の女の子、かわいがってくれていた近所のお婆ちゃんなどなど。

よくすれ違うのにすっかり疎遠になっていた。

 話すのは魔物とばかり。

「愛想をつかされたのではないか?」

「かもしれんなあ。否定はしきれん」

苦笑い。

そうするしか、今のルボワには逃げ道が無かった。

 「元々そんなに話す奴じゃ無かったんでなあ。きっと時間が解決してくれるさ」

「そんなむちゃくちゃな」

「丸投げしおったな……」

無理やり逃げ道を確保するルボワ。

苦笑いが大笑いに変わっている。

「話しは変わるのですが、ルボワさんは幻石の守り人というのはご存知でしょうか?」

「幻石の守り人?知らんなあ。第一幻石なんて存在するのかもわからんのに」

「そうですか……」と、今度は真騎が苦笑い。

対するルボワは、何かを思い出したように口を動かした。

「だが、昔っから幻石の仕業なんじゃねえかって話しがあんのよお。ここぁ空間を司る幻石があるって言い伝えだろ?」

 2の島は空間の幻石があると伝わっている場所。

地球と繋がっていた不安定な空間を守るためではないかと考察されている。

そしてその影響なのか、2の島出身の者は空間能力に長けている事が多い。

「ここよりも奥、森林を越えた2の島先端《ツーポイント》にはたどり着けねえんだ」

「行けないって事ですか?」

「おうよ。俺もダチと行ったことがあるんだが、進んでも進んでも同じ道。まるで入ってくんなって言われてるみてえでよぉ。帰りはそんなこと無かったけどな」

 ただでさえ他の島よりも空間が不安定な場所だ。

制御できていなくても不思議ではない。

しかしもし幻石の仕業なら……?

「それと……」

「まだ何かあるのか?よく知っておるのう」

 「はははっ!今言おうとしたやつの方が、いろいろ知ってるぞ。素性はわからんが、ここいらでヒーローというのをやっておる。いわゆる雑用係だな。名前は乙人(おつと)。見たらすぐわかるさ。うるさい奴だからな」

「その方に聞いたら何かわかるかもしれませんね……ありがとうございます、ルボワさん」

「お安い御用だ!息子も世話になってるしな」

その世話になっている息子、レストは今ぐっすり寝ている。

数日ぶりの実家だからなのか、いつもより深い眠りについていた。

隣には常に小さい魔物が沢山。

「今日はもう遅いから、止まっていくといい。レストもすっかり眠っちまってるしな」

「いいの!?やったー!野宿回避ー!ありがとうおじさん!」

「毎度毎度運が良いのう」

「すみません、お世話になります」

「その代わり、付き合ってくれよ?」

その日の夜、深夜まで晩酌を続けた為に、城との通信ができなかったとかなんとか……。

 

 

「真騎ー大丈夫ー?」

「大丈夫じゃないです……」

「2人して飲み過ぎなのだ。加減を考えんか」

「返す言葉もねえや」

翌朝。

椅子に座ったまま寝ていた真騎とルボワの元に、白姫とベネジクトがやって来ていた。

いつもは起こされる側のベネジクトが、今日は逆の立場である。

「真騎ってお酒飲めるのね。なんか意外かも」

「ふふっ、よく言われます」

「記憶が曖昧だが、兄ちゃんあんまり酔ってなかったな」

「そんなこと無いですよ。夜の記憶全くありませんからね」

「全くないの!?」

全く無いらしい。

本当に綺麗さっぱり忘れているようで、飲む前に退出した白姫とベネジクトの記憶さえ無かった。

「さて。だいぶ楽になりましたし、ルボワさんを1人にするのは心配ですがそろそろ出ましょうか」

「えっ休まなくていいの!?」

「はい。自分の身体なら光魔法で治せるんです。医者ではないので他人は治せませんが」

さすが隊長……と言ったところか。

しかし普通ならば、こう言った病などは自分の魔法で治すことはできない。

医者に魔法をかけてもらうか、時間が解決するまで待つしかないのだ。

「不思議な奴だのう。貴様本当に人間か?」

「ふふっもちろん人間ですよ」

「魔法は解明されてない部分も多いし、ありえない話しじゃ無いでしょ」

「そういう事です。ではルボワさん、昨晩はありがとうございました。お水と食べ物を置いておきましたので、召し上がってください。失礼致します」

「……バイバイ」

「こっちこそありがとうな。レストをよろしくたのむぁ!レストも迷惑かけんなよー!」

深々と礼をして、4人はその場を去った。

 

 

次の目的は、いろいろ知っているという乙人に会うこと。

特定の場所に現れる訳では無いため、これまた探さねばならない。

ただし今回は有名人なので、探すのは簡単であった。

バラけることなく4人で聞き込みをしていると、「その子ならさっき向こうで子供達と遊んでいた」という嬉しい答えが返ってきた。

指差した方へ向かうと、聞いた通り子供が集まっていた。

そしてこのベネジクトの一言。

「なにあの仮面……ダッサ」

 金髪の髪を右耳辺りで1つにまとめ、左に垂らした前髪は長く、亜麻色のワンピースに黒のズボン。

 おまけに青い飾りの着いたネックレスに、顔面にはパーティでよく見るあの仮面。

ヒーローとは程遠い容姿だが、子供に好かれている為悪い人では無さそうだ。

「あの、乙人さん……ですか?」

「はっ!何奴!?さては悪の組織の者か!?」

「えっ」

「んなわけないでしょ」

「うるさい奴というのは真だったな」

華麗に茶番を止められ、頬を膨らました。

「ちょっとくらいノってくれたっていいだろー!?そうだ、俺様が乙人!悪い奴らは俺に任せな!」

 

 

幻石〜その他の愉快な仲間たち〜 第2話

さっき真騎と通信した時、俺の……俺らの家族が2の島に住んでいるのだと報告された。
会いたくない訳じゃない。
が、今更会ったところで何が起こるわけでもない。
もう顔も名前も思い出せないのだから。



第2話「囚人の人生」



「おいレイバー!!シャン様から聞いたぞ。あれは本当か!?」
「あぁ。昨日俺も真騎から聞いた。あいつが嘘つくわけない」
このちっこいのは俺の4つ上の姉貴、オルコ。
そこらのガキと混じってても違和感がない程小さな身体からは想像もつかないくらい、大人で、強くて、俺と違って頭の回転も早くて、誇れる姉貴だ。
ただとても厳しい性格で、俺は嬉しいが他人には恐れられている。
あの罵声たまんねえんだよなあ!
攻撃部隊隊長の俺と違って、姉貴は攻撃部隊育成長をしている。
いわゆる俺の部下を育てる役職だ。
姉貴のおかげで強い奴らがたくさんいるけど、平和ボケしたこの世界に攻撃部隊なんてあまり意味がない。
「お前は行きたいか?」
「行きたくないと言えば嘘になる。けど、何も覚えてないしな……」
「大丈夫じゃないか?親父たちの方は覚えてるさ」



俺らは子供だけを狙った人さらいにあった。
拐われたのは俺が6歳、姉貴が10歳の時。
妹がさらわれなかったのは、産まれたばかりだったからだろう。
その後の生活はとてつもなく酷かった。
そこはこれから住む場所と思えないくらいボロくて、そいつは俺らにいつもきつく当たった。
毎日働かされ、食事は1日1回の小さなパンのみ。
教育もろくに受けていなかった俺らに、当然実家を調べる術なんてなかった。
今思えば、嫌がってないでちゃんと勉強しときゃよかったな。


それから数年が経ち、さらわれたみんなで脱走計画を立て、無事に成功させた。
リーダーは姉貴だった。
しかし脱走したところで行く宛もなく、まだ子供だった俺らは働けず、盗みを犯して生きていた。
大人になってももちろん誰にも雇ってもらえなくて、この盗賊生活は続いた。
いつの間にかそこそこ名の知れた盗賊団になっていて、俺らを見るだけで人々は食料を差し出した。
その頃の俺らには罪悪感よりも優越感が勝っていて、平気で罪を犯した。


確か俺が20ちょっとくらいの時だ。
今から約10年前だな。
恐れていた地下牢行きが実現してしまったのは。
当然の報いだと、俺と姉貴、他数名は大人しく連行された。
何人かは逃げてたらしいけど。
薄暗くてジメジメした地下牢。
それに反して、そこは本当に罪を犯して捕まった者達なのか疑うほどいい奴らばかりだった。
でも話を聞いていると俺らより罪が重くて、刑期なんて比べ物にならない奴もいた。
連続殺人、城への無断侵入、あとは……忘れちまったけど。
なんでいい奴らばかりなのか不思議に思っていたが、そんな悩みはすぐに解決した。


ある日、飛んできた刃物が俺の鼻の頭をかすった。
もちろん牢屋に入っている時だ。
その後カツっと音を立てて、刃物が壁に突き刺さっていたのと、ゾクッとしたのをよく覚えている。
そしてこの言葉も。
「こんなものもよけられないのに、よく名が知れわたっていたものですね。なんと言うか、残念です。期待はずれでした」
「ガキがこんなところに何の用だよ」
「口の聞き方がなっていないようですね。躾が必要ですか?」
障害物を避けながら次々と飛んでくる刃物。
「私はシャン。この城の王女であり、6の島の長です。今日は見回りにきているのですよ」
そう、これは当時10歳くらいだったシャン様の言葉だ。
今のシャン様をそのまま小さくした感じだった。
容姿から性格から全て。
違うところと言えば威厳くらいだろうか。
俺にはこの時の方があったように思える。
記憶に修整がかかっているだけかもしれないが。
「なんだ、王女様かよ。安心しろ、逃げやしねえよ。ってか逃げらんねえし」
「あなたは脳筋ですか?私ならこんな牢屋、すぐに出ますけどね」
ませたガキだなと思った。
でもその姿は怯えているようにも見えた。
強がっていたから、キツい言葉をかけたのかもしれない。
「けど脱獄すれば刑期が伸びんだろ?そんな馬鹿な真似はしねえよ」
「利口な犬ですこと。ねえお兄さん、出所したら帰るところありますか?」
「あぁ!?んなこと聞いてどうすんだよ、どっか行けぇめんどくせえ」
今思うと、いくら子供とはいえ王女であるシャン様にとても失礼だったと思う。
もっとも、シャン様はそんなこと気にするような人じゃねえけど。
「宜しければ、城で働きませんか?攻撃部隊なんてとてもお似合いだと思うのですが」
「喧嘩売ってんのか?」
「いいえ。本気です」
城で働けるなんてほんのひと握りの奴らだけだ。
願ってもないチャンス。
手に職つけれるんだからな。
だが他の仲間は?俺だけ抜け駆けすんのか?
姉貴は……?
「……先ほどオルコさんにお会いしました」
「!?」
「優しいお姉様ですね。羨ましい限りです。あの方が私になんと仰ったと思いますか?」
検討はつく。
普段は鬼のようだが、根はとても優しい人だ。
きっと……。
「『私は構わないから、他の奴を雇ってやってくれ。だいたい、あいつらをこんなんにしちまったのも私のせいだからな』と。それであなたに伺いに来たのです」
「こんな戦うことしか能のねぇ俺よりも、頭のキレがいい姉貴の方が何倍も役に立つ!俺はいいから……」
「押し付け合いですか?あなた何か勘違いしていません?」
シャン様は後ろに手を回し、首を傾ける。
勘違い?どういう事だ?
「部隊ですよ。それも大勢の。戦力が増えるんですから、1人しか採用しないなんてもったいないことしません。人は選びますけどね」
ニコッと女神のような笑みを浮かべながら言い放った。
ああそうか。盲点だった。
でもそれなら、何故姉貴は断った?
「オルコさんには、攻撃部隊の隊長に誘ったんです。今の隊長、少し気に入らないもので……それにあなた達の方が経験は豊富そうですし」
最初の方でも言ったが、この世界にはこんな部隊なんて居なくても平和に過ごすことができる。
つまり実践経験のある奴は少ないのだ。
しかし俺達は盗賊、当然他の盗賊とやり合うこともあった。
「……何故俺を選んだ?他にもたくさんいるだろ」
「何故でしょうね。私はあなた達のこと微塵も知りませんが、悪い人には見えないのです。あなたとオルコさんは特に」
俺はこの時悟った。
この人についていけば、俺は変われるんじゃないか?
正当な人間になれるんじゃないか?
周りの悪人がいい奴に見えるのも、きっとこの人のおかげ。
具体的にどうだからとか、俺は馬鹿だからわからないけど、そう確信していた。
「わかった……いや、わかりました、シャン様。ここから出られた時、俺はあなたに一生命を尽くしましょう」
「ふふっ。その言葉、しっかりと心に刻んでおいてくださいね」
そう言うと、檻の隙間から細い手を伸ばし、俺の顔に魔法をかけた。
青色、水魔法だ。
「もうこんなヘマしないでくださいね」
回復はされたものの、魔法は苦手だったのか今も痣が残っている。
その後無事出所した俺は、攻撃部隊に入隊し、今に至る。
姉貴も言い負かされたようで、最初は部隊長に任命されていた。
その後は俺の出世とともにその座を降り、育成長をしている。


「サージャはん、お客様が来てはります。レイバーはんに用があるようですわ〜。どないします?」
「あなたが通達とは珍しいですね、浅葱さん」
「丁度通りかかったんですわ。えらいあたふたしてたんで助け舟出したっただけです」
「もしかして光闇さんが仰っていた方ですか?」
「お察しの通りですよ。証拠に黄色い印押された手紙持ってはりましたし」
「それならば私が"彼ら"に伝えておきましょう。あなたは客間に案内なさい」
「御意。ほな行きましょか、お嬢さん」


何故か俺と姉貴に客が来てるとの知らせを聞き、客間に向かっている。
誰だぁー!?俺らに知り合いなんて!
「百面相してるぞレイバー。そう気を張るな」
「んなこといったってよぉ!初めてだぜ!?」
いつもと変わらない姉貴。
すげえなあ、なんで冷静で居られるんだー!?
思考を巡らせていると、あっという間に客間の扉の前に着いた。
来てしまった……中に居るのは……?
コンコンっとノックし、返事を乞う。
『レイバーはんですかー?入っていいですよー』
何故か浅葱の声がして、それに答えるように俺らは中に入った。
中にいたのは、金髪と紫色の目を持った女性。
「この2人が、探しとった人物でっせ。オラシオンはん」
浅葱がその名を呼んだ時、ある人物が脳裏をよぎった。
今までずっと忘れていたひとりの人物。
俺の、俺達の、世界でひとりの……。
オラシオンって……お前まさか」
「覚えててくれたんですね……良かった……本当に……」
彼女はその場で泣き崩れてしまった。
「わざわざ会いに来てくれたのか……?」
「はい……光闇さんと別れた後、すぐに出発の準備を始めました。早く会いたかったから」
「言ったろレイバー、気を張るなと。オラシオンも、ありがとな。親父達は元気か?」
「はい。とっても元気ですよ!」
知らせを聞いてからわずか一日。
こんなに早く会えるなんて思わなかった。
世界でひとりの俺達の妹、オラシオン
微かに残る記憶には、泣きわめいていた小さな体しか無いけれど、今まで一緒に居たような感触がある。
「ずいぶん大きくなってんな!姉貴とは大違痛い!!」
「黙れクズ。それは記憶補正のせいだ」
「大丈夫ですか!?!?」
「こんなくらい何ともねえよ。寧ろ嬉しい」
「それ実の妹に引かれるんとちゃいます?」
「それはそれで良い!!」
「良いのか……」
ふふっとオラシオンが笑った。
本当にずっと想ってくれてたんだな。
俺は忘れていたのに、なんだか申し訳ねえや。
「兄さんと姉さんの安否が確認できた上に、こうやって会えて話せたこと、とても嬉しく思います。今度は家に帰ってきてくださいね。父さんと母さんも待ってますから」
「あぁ。時間が出来たら2人で押し掛けるさ」
「楽しみにしててくれって伝えといてくれよ!」
「はい!」
急に来たせいであまり時間が無いらしく、あっという間にお別れの時間。
約25年ぶりに姉貴以外の家族と会えただけで、生きていて良かった、ここに居て良かったと思えてくる。
「せや、3人で写真撮りはったらいかがです?わいが撮ったりますよ」
「本当ですか!?お願いします!」



「今日は楽しかったな姉貴!」
「そうだな。次は私らが行く番だ。時間作っとけよレイバー」
「それはこっちの台詞だっての。姉貴のが忙しいだろー?」
「お前が仕事サボってるからだろうが」
「はい……」
今度家に行った時も、家族全員で写真撮りたいな。
そしたら俺の部屋に2つを隣同士で飾って、毎日元気を貰うんだ。