幻石〜5つの石を探す旅〜 第18話
「貴様、餓鬼のくせにこんなところで何をしている?さっさと帰ってママと一緒に昼寝でもしてな!」
「負け犬の遠吠えだね。既にボロボロじゃないか。出直してくればー?そうしたところで僕には勝てないけど」
桜樹を逃がした後、数人で数十の相手をし続けていた。
だいぶ数は減っているが、敵部隊の中心である少年には未だに傷を負わせられていない。
こちらは刀なのに対し、相手は遠距離からお札を使い爆発を仕掛けてくる為に近づけないのだ。
そして今青梅がいるのは、薄い青緑の髪色をしたその少年の近く。
少年という形容が相応しい程幼く、戦場には似つかわしい風貌をしている。
その反面ませているようで、口が達者だ。
「お喋りが過ぎるぞクソガキィ!!」
勢いのまま少年へ突っ込む。
「ちょっと!危ないじゃないか!それに僕は餓鬼でもクソガキでもないよ。水無月ってちゃんと名前があるんだから!」
「水無月……!?」
術について
3の島のどこかに存在している村には、修行を積んだ忍という者が居る。
修行する事で己の魔力を高め、魔法道具無しで扱う魔法をここでは術と呼ぶ。
魔法と同じ5つの属性があり、発動する時は火魔法や草魔法ではなく
火→深火術(しんかじゅつ)
草→深草術(しんそうじゅつ)
水→深水術(しんすいじゅつ)
光→深光術(しんこうじゅつ)
闇→深闇術(しんあんじゅつ)
という単語を頭に付ける。
魔法道具(主に武器)を用いて魔法を発動させている者もいるが、この村では魔法という概念が無いため全て術と呼ぶ。
魔法と同じ点は、スペルストーン(ここでは輝石(きせき)と呼ぶ)を所持していなければ使えない所。
魔法使いはアクセサリーにして持ち歩くが、忍は属性モチーフの形にして額当てに埋め込んでいる。
また術は魔法に比べてレパートリーが少ない為か、ナンバリングではなく直接名前を付けて管理している。
特別に規則は無いが、ほとんどの者が造語を含めた四字熟語をそのまま名前にしている。
術も属性によって得意な効果が異なる。
魔法と同じなので、詳しくは魔法記事参照。
妖精について
魔法の記事でも紹介した通り、属性毎に妖精が存在する。
火、サラマンダー
草、シルフ
水、ウンディーネ
光、ピクシー
闇、インプ
火草水の妖精は至って普通に暮らしているが、ピクシーとインプは伝説とされ未だ見た者はいない。
人には見えないからだとか、絶滅しているからだとか、諸説あるが真偽は不明。
純血の妖精は例外なく対応した属性しか使うことができない。
詳しくは魔法記事参照。
妖精は人間に比べて背が低く、羽があるのが特徴である。
一番早く飛べるのがシルフ、他は同じくらい。
羽の形は人それぞれ。
耳の形状は種族によって異なる。
下記の図参照。
なおピクシーとインプは想像上の生物に等しいので、こちらも真偽は不明。
また、サラマンダーは褐色肌、シルフは色白肌が多い。
髪や目の色はだいたい属性に対応した色となる。
ただし異属性の混血の場合は除く。
幻石〜5つの石を探す旅〜 第17話
どこかの屋敷の庭で、桃色の髪飾りを付けた黒髪の男性……否、女性とも見て取れる中性的なその人物は、いつもと変わらぬ日々を過ごしていた。
いつも通り手入れされた大層豪華な庭を、いつも通り眺めながら歩く。
しかし今日は1つだけ、いつも通りとはいかない出来事があった。
「……矢文?」
木造の屋敷に綺麗に突き刺さった一本の矢文。
それを引き抜き、括りつけられている紙を解く。
何の変哲もないただの紙切れだ。
中には達筆な文字で、こう書かれていた。
『1週間後に戦を仕掛ける』
「なんだ?悪戯か?」
くだらない、とその紙を捨てようとした時。
ちらっと見えたその2文字に、悪戯ではないと確信を持った。
それは手紙を読んだ人物がよく知る名前であった。
何故なら……。
「これが本当なら……くそっ!!」
それは昔、その名の者が自分の付き人だったからである。
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